Terafabの完成予想図。画像=イーロン・マスク氏のX投稿より

TeslaとSpaceXは、米テキサス州グライムズ郡に半導体メガ工場「Terafab」を建設する計画を明らかにした。第1段階の投資額は168億ドル(約2兆5200億円)。ロジック、メモリ、パッケージング、テストを1カ所に集約し、半導体サプライチェーンの強化を目指す。

6日付のElectrekなどによると、建設地はヒューストンの北西約1時間の場所。完成時の計画面積は1億平方フィート(約929万平方メートル)超を見込み、両社は世界最大級の半導体製造施設になるとしている。

イーロン・マスク氏はTerafabについて、「間違いなく地球上で最も価値のある建物になる」と表現した。SpaceXは同日、4棟の巨大な長方形の建物と、それらを結ぶ道路を描いた俯瞰図とパノラマ画像を公開した。一方で、設計は今後変更される可能性があるとしている。

Terafabの中核にあるのは、大規模な垂直統合だ。SpaceXによれば、ロジック、メモリ、パッケージング、テストまでを1カ所に集約する一貫生産体制を構築する。

生産したチップは、Teslaの「Optimus」ロボットや「Cybercab」、SpaceXが進める宇宙ベースのデータセンター向けなどに投入する予定だ。Teslaは、TeslaとSpaceXの両社が「現在および将来の世界の生産量でも賄えないほど多くのチップを必要とする」と説明し、年1テラワット超のコンピューティング生産を目標に掲げた。

SpaceXはTerafabを通じて、東アジアの一部企業に偏る半導体生産への依存を減らし、安定的なチップ供給網の確保を目指す。第1段階の資金はTeslaとSpaceXが共同で拠出し、拡張段階では総投資額がさらに増える可能性がある。

雇用は少なくとも3000人規模を見込み、その大半を地元で採用する計画だ。

地域で懸念されている水利用については、2018年に閉鎖した石炭火力発電所の冷却用として使われていたギボンズ・クリーク貯水池の水を活用する方針を示した。SpaceXは、地域の地下水は使用しないとしている。

一方で、住民の反発も出ている。グライムズ郡では約900人の住民が、大規模なAIインフラ事業に対する地域の監視強化を求める請願書に署名した。

SpaceXは郡に対し、年2000万ドル(約30億円)を支払うことで合意した。SpaceXの弁護士、バッキー・ブレナン氏によると、この金額は固定資産税として支払う額の約78%に相当するという。

5日に開かれた住民説明会では、Terafabの開発責任者ライリー・トレッテル氏が、計画に早期に着手する考えを示した。SpaceXで環境・保健・安全・医療を担当する上級ディレクターのジョーダン・バス氏は、Terafabは米国のAI競争に不可欠だとした上で、「米国、ひいては西側文明にとって戦略的に極めて重要な案件だ」と強調した。

もっとも、事業規模や投資計画の確度にはなお不透明感が残る。マスク氏が3月に初めて計画を公表した際の投資額は250億ドル(約3兆7500億円)だったが、今回は168億ドルを第1段階投資として示した。

また、SpaceXは5月の新規株式公開(IPO)届出書で、Terafabを法的拘束力を伴わない一般的な枠組みと説明していた。知的財産権の配分も確定しておらず、いずれの当事者にも継続参加の義務はないとしている。

これに先立ち、一部ではTeslaが自前で工場を建設せず、Intelが製造を担う可能性も取り沙汰されていた。

Terafabは、Teslaの足元のチップ不足を解消するための設備とは性格が異なる。Samsung Electronicsのテキサス州テイラー工場はすでにTeslaのAI5チップ生産に入っており、Teslaは昨年、次世代AI6チップの生産に向けて165億ドル(約2兆4750億円)規模の契約もSamsung Electronicsと締結した。残る生産はTSMCが担う。

このためTerafabは、TeslaとSpaceXのコンピューティング需要が半導体業界全体の生産量を上回るとするマスク氏の見通しを前提にした、長期投資の色彩が強い。

規模も前例のない水準だ。計画面積の1億平方フィートは、TSMC最大のギガファブの床面積の10倍超に当たるという。

TSMCはアリゾナ州で6工場を建設するため約1650億ドル(約24兆7500億円)を投じる計画だが、それらを合計してもTerafabの計画面積には大きく及ばない。年1テラワット規模のコンピューティング生産を目標に掲げる工場も、現時点では存在しないとしている。

Electrekは、用地選定や許認可手続き、住民説明会の進展によって、Terafab計画が3月時点より具体化したのは事実だと評価した。その一方で、公表内容と投資家向けに示された事業計画の間にはなお隔たりがあると指摘。特に、第1段階の168億ドル投資と今後の追加投資のうち、どの程度がTeslaの財務諸表に反映されるのかが、株主にとって重要な変数になるとしている。

キーワード

#Tesla #SpaceX #Terafab #半導体 #AI #テキサス州 #サプライチェーン
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.