OpenAIが半導体スタートアップRain AIの一部特許を取得した。Rain AIの買収には至らなかったものの、神経模倣半導体に関する知財を確保し、自社AIチップ開発を前に進める。NVIDIA製GPUへの依存を下げ、AIインフラの主導権を握る狙いがあるとみられる。
海外メディアの報道によると、OpenAIは8月6日(現地時間)、Rain AIとの交渉の結果、同社の一部特許を取得した。取得額や対象となった特許の詳細は公表していない。
Rain AIは2018年設立の半導体スタートアップで、人間の脳の情報処理を模した神経模倣プロセッサの開発を進めてきた。GPU中心のAI計算基盤に比べて電力効率を高め、AIモデルの学習・推論コストを抑えることを目指していた。
OpenAIとRain AIの関係は以前からあった。サム・アルトマンCEOは個人としてRain AIに出資しており、OpenAIも2019年に、同社が開発するAIチップを将来5100万ドル(約76億円)規模で購入する意向書を結んでいた。
ただ、Rain AIは商用チップの投入に至らず、経営難に陥った。資金不足と顧客開拓の不振で事業は縮小し、2025年以降は売却の可能性も探っていた。1億5000万ドル(約225億円)規模のシリーズB調達も目指したが、実現しなかったと伝えられている。
OpenAIは当初、Rain AIの買収を検討していたが、条件面で折り合わなかった。その後は全社買収ではなく、必要な特許の取得へ方針を切り替えた。交渉決裂後、Rain AIでは従業員の大半が離れ、事業は事実上停止したとされる。
今回の特許取得は、OpenAIが進める自社半導体戦略の一環と位置付けられる。OpenAIはAIサービスの運用コストを抑えるため、NVIDIA製GPUへの依存低減を視野に、用途別のカスタムチップ開発を進めている。
足元ではBroadcomと協力し、推論向けのカスタムAIチップ開発を進めている。AI計算コストの大幅な削減につながる可能性があるという。AnthropicやMetaも自社半導体の開発に動いており、AIインフラを巡る競争はGPUの確保からチップ設計へと広がっている。
今回の取引は、Appleとのハードウェア関連訴訟が続く中で実施された点でも注目される。Appleは、元エンジニアが機密のハードウェア情報をOpenAIに持ち込んだとして提訴しており、OpenAIは訴えの棄却を求めて争っている。
Appleは、自社出身のエンジニア約400人が現在OpenAIで働いていると主張する。一方、OpenAIは、Appleが退職者による業務データへのアクセスを適切に遮断していなかったとして、採用手続きに問題はなかったと反論している。裁判所はまだ最終判断を示していない。
市場では、Rain AIからの特許取得を単なる技術の買い取りではなく、OpenAIの長期的なハードウェア内製化戦略の一部とみる向きが多い。取得した特許をどのAIチップや機器に適用するかは明らかにしていないが、自社半導体とAI機器のエコシステム構築に向けた動きが一段と鮮明になった。