世界的なメモリ価格の高騰が、PCとスマートフォンの製品戦略に波及している。Microsoftは高性能PC向けに示していた32GB RAM推奨の関連文書を削除し、Windows 11を8GBメモリ環境でも快適に動作させるための最適化を進める。Appleも次期iPhoneやMac向けモバイルDRAMの調達で難しい対応を迫られている。
TechRadarが8月6日(現地時間)に報じたところによると、MicrosoftはWindows Learning Centerに掲載していた32GB RAMに関する文書を削除した。同文書では、32GBメモリを高負荷のゲーム用途に適した容量として紹介していた。
現在は当該リンクがWindows Learning Centerのメインページに転送される状態となっている。業界では、メモリ価格の急騰を受け、32GB推奨を前面に出しにくくなったことが背景にあるとの見方が出ている。
Microsoftはこれまで、Copilot+ PC戦略とあわせて16GBメモリを実質的な標準として打ち出してきた。だが、PC向けDRAMの供給不足と価格上昇が続くなか、大容量メモリを搭載するモデルは価格負担が重くなっている。
実際、Microsoftは最近、Surface ProとSurface Laptopの製品群に8GB RAMモデルを再投入した。16GBを事実上の最低ラインとして訴求しにくい環境で、32GB推奨まで維持すれば消費者負担をさらに高めかねないと判断した可能性がある。
OS側もこうした環境変化に対応する。Microsoftは年末までに、Windows 11が8GBメモリ環境でもより高速に動作するよう改良を進める計画だ。メモリ容量を抑えた普及モデルでも、ユーザー体験を維持する狙いがあるとみられる。
メモリ需給の逼迫はAppleにも及んでいる。Appleは最近、8GB RAMを搭載したMacBook Neoで、比較的少ないメモリ容量でも性能を引き出せることを示したが、量産には安定したメモリ調達が欠かせない。
とりわけ、次期iPhoneとMacBook向けに必要なモバイルDRAMの確保が課題になっている。Appleは中国のメモリメーカーChangXin Memory Technologies(CXMT)と供給交渉を進めたものの、価格面で折り合えなかったと伝えられている。
CXMTは中国国内需要を背景に、Apple向けに特別な低価格を提示する必要性が乏しく、Samsung ElectronicsやSK hynixと同水準、あるいはそれ以上の価格を維持したという。このため、Appleにとって供給網の多様化による効果は限定的だったとみられる。
市場では、iPhone 18シリーズや折りたたみ製品の投入を控えるAppleのメモリ確保の動きにも関心が集まっている。Bloomberg Intelligenceのアナリスト、ティム・カルパン氏は、Appleと各サプライヤーが新製品の投入に向け、十分なメモリチップの確保に注力していると伝えた。
背景にあるのは、AI投資の拡大を起点とするメモリ需給のひっ迫だ。AIサーバ向け高帯域幅メモリ(HBM)の需要が急拡大し、主要メモリ各社が高付加価値製品の生産を優先した結果、汎用DRAMの供給が細り、価格上昇につながっている。
消費者側では、PCやスマートフォンの価格上昇圧力が強まる可能性がある。一方、Samsung ElectronicsやSK hynixなどのメモリメーカーは、AI向けメモリ需要の拡大による恩恵を受ける公算が大きい。
特にHBM4など高付加価値製品で競争力を持つ企業は、下半期も高い収益性を維持する可能性があるとの見方も出ている。
メモリ不足は、単なる半導体の供給問題にとどまらず、Big Techの製品設計やOS戦略にも影響を及ぼし始めた。Microsoftは大容量推奨から低容量環境の最適化へと軸足を移し、Appleは次世代機向けメモリの安定確保という課題に直面している。下半期のPC・モバイル機器市場は、メモリ供給の動向に大きく左右されそうだ。