新型EVピックアップトラック「Fathom」 写真=Ford

Fordは8月6日(現地時間)、新型EVピックアップトラック「Fathom」を2027年に発売すると発表した。車両本体価格は2万8350ドル、配送費1595ドルを含む価格は2万9945ドルで、3万ドルを下回る設定とした。

海外メディアのInsideEVsなどによると、Fordは2027年初めに予約受け付けを始めるとともに車両の詳細を公開し、同年秋から納車を開始する計画だ。

Fathomは、Fordが新たに開発した「ユニバーサルEVプラットフォーム(UEV)」を初採用する中型EVピックアップトラック。複数のEVに共通展開できる専用基盤として設計されており、新たな組立工程も含めてコスト低減を図る。ジム・ファーリーCEOが、Teslaや中国EVメーカーへの対抗を見据えて進めてきた中核プロジェクトの1つでもある。

同車は、FordのEV戦略を立て直すうえで重要なモデルと位置付けられている。Fordは2025年、中止したEVプロジェクトに関連して195億ドルの減損損失を計上。連邦EV税額控除や燃費規制の見直しに合わせ、戦略の調整を進めてきた。

F-150 Lightningの終了後、米国市場でのFordの乗用EVラインアップはMustang Mach-Eのみとなっていた。FathomはLightningに続く同社2車種目の量産EVピックアップで、1990年代後半に限定生産されたRanger EVを含めれば3車種目に当たる。

車名について、FordのModel e部門を率いるケイ・ハート氏は、「fathom」には水深を測る単位の意味に加え、「深く理解する」という意味もあると説明。エンジニアリング、製造、デザインの各面で新たな革新を象徴する名称だとした。

ハート氏はあわせて、1ファゾムが約6フィート(約182センチ)である点は、荷台長を示したものではないと述べた。Fathomは、Fordが昨年商標を出願したFuse、Hive、Mythic、Evoseといった新たなネーミング群の流れに連なる車名でもある。

最大の訴求点は価格だ。3万ドル未満の価格設定はFord Maverickに近く、Chevrolet BoltやNissan Leafなど普及価格帯のEVと競合する水準となる。米国で最も安価なEVとされるSlateピックアップは、配送費込みで2万6400ドルからだが、手動式ウインドウに加え、タッチスクリーンやスピーカーも省いた最小構成だという。

これに対し、Fathomは標準装備を充実させた。5人乗りのキャビンはToyota RAV4より広く、大型の高解像度タッチスクリーンを備え、Apple Mapsに対応する。充電スポットの自動提案やリアルタイム交通情報、EV向けの経路案内にも対応し、Apple CarPlayとAndroid Autoも利用できる。ただしCarPlay Ultraはサポートしない。

双方向充電、デジタルキー、フロントトランクも標準装備とする。

ハンズフリー運転支援システム「BlueCruise」は、全グレードでハードウェアを標準搭載する。ただし利用には追加費用がかかる。Fordは今後、出発地から目的地までのドライバー監視下での走行支援機能を追加し、前方監視を不要とする水準については2028年の実現を目標に掲げた。

バッテリー容量、1充電当たりの航続距離、急速充電性能は現時点で公表していない。2万8350ドルの価格は標準バッテリー車を前提としており、容量拡大型が追加される可能性が高い。ハート氏は、300マイル(約483キロ)の航続距離を求める需要を把握しているとしたうえで、発売時には複数の選択肢を用意すると明らかにした。

バッテリーには、ミシガン州の「BlueOval Battery Park Michigan」で生産するLFP角形セルを採用する。同工場には総額30億ドルを投じており、CATLの技術をライセンス方式で活用する。車両はケンタッキー州ルイビル工場で、新たな「アセンブリー・ツリー」工程を用いて生産する。

Fordは、Maverick Hybridとのカニバリゼーションの可能性については、顧客層が異なるとして否定した。ハート氏は、Fathomは業務用途よりライフスタイルを重視したEVピックアップで、時間の経過とともにソフトウェアとハードウェアを継続的に進化させていける車両だと説明した。

FathomとUEVプラットフォームは、数年前から水面下で開発が進められてきた。ファーリーCEOが元Tesla幹部のアラン・クラーク氏に託したプロジェクトが母体で、Rivian、Tesla、Appleの自動車開発プロジェクト出身者らが、本社から独立したロサンゼルス拠点で開発を担ってきたとされる。

米国の新車平均価格が5万ドルに達するなか、3万ドル未満の価格設定はFordの原価革新戦略を反映したものとみられる。一方、EVピックアップ市場の拡大はなお限定的だ。F-150 Lightningの販売はピーク時の四半期でも約1万台にとどまり、Tesla Cybertruckも初期の勢いの後は販売の伸びが鈍っている。

FordはFathomについて、専用プラットフォームを基盤に航続距離や電費、車内空間の効率を高め、EVピックアップ市場の需要喚起につなげたい考えだ。詳細仕様は2027年初めに正式発表する予定としている。

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