Tonly Heavy IndustriesとHiNa Batteryが共同開発したナトリウムイオン電池搭載の電動鉱山トラックが、中国・唐山の石灰石鉱山で稼働を始めた。乗用EVにとどまらず、大型産業車両でもリチウムイオン電池の代替を見据えた次世代電池の実装競争が動き始めている。
米EVメディアElectrekが6日に報じたところによると、Tonlyの電動鉱山トラック「K120E」は、中国・唐山の三友石灰石鉱山で運用を開始した。
車両の中核となるのはナトリウムイオン電池だ。K120Eには、HiNa Batteryの676kWhの「Hai Xing」シリーズを採用した。HiNa Batteryは、電動鉱山トラック向けとして世界初のナトリウムイオン電池だとしている。
Hai Xing電池について同社は、0%から100%までの充電を数分で完了でき、最大8000回の充放電サイクルに対応すると説明している。エネルギー密度は165Wh/kgという。
ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池に比べて原材料調達面の制約が比較的小さいとされる。リチウムと異なり資源量が豊富なナトリウムを活用できるため、特定国に偏った鉱物供給網への依存を抑えやすい。
熱安定性が高く、低温環境でも性能が落ちにくい点も、大型の産業車両では強みになり得る。
とりわけ今回の導入先となった中国北部は、冬季の厳しい寒さで知られる。ハルビンや瀋陽などでは、夜間の気温が氷点下20度を下回る地域もある。
寒冷地では、一般的なリチウムイオン電池は出力や効率が低下しやすい。ディーゼルエンジンも始動性や保守面で課題を抱える。
寒冷地でEVが安定した性能を示した事例もある。2024年には、米ウェスト・グランド郡学区の交通責任者ベサニー・オリンウェンが電動スクールバスの運用経験について、「氷点下20度でも“良い日”という環境だったが、性能は非常に良かった」と評価したとされる。
こうした点から、寒冷地では電動パワートレインの優位性が見直されつつある。
鉱山機械の電動化は、排出ガスの削減だけが目的ではない。運用効率や作業安全の面でも重要性が増している。厳寒環境でディーゼル機器が十分に稼働できなければ、生産の遅れや安全面への影響につながるためだ。
Tonlyは電動化に加え、自動運転対応の鉱山車両の展開も進めている。最近では、中国・新疆のハンシャン地域に自動運転鉱山トラック「TLE135」を800台供給すると発表した。
電動駆動と自動運転を組み合わせることで、大規模鉱山の運用のあり方を変える狙いだ。
Tonlyは、ナトリウムイオン電池を採用した鉱山トラックによって、排出ガスの削減、騒音の低減、作業安全性の向上、厳寒環境への対応を同時に実現したい考えだ。
今回の事例は、ナトリウムイオン電池が研究段階を超え、実際の産業現場で使われ始めた点で注目される。これまで同電池は、エネルギー密度の低さから乗用EVよりもエネルギー貯蔵装置(ESS)や低価格EV向けでの活用が中心だった。
一方で、高い安定性と原材料面での優位性を背景に、用途は着実に広がっている。
今後の焦点は、中国北部の鉱山で蓄積される実運用データだ。厳寒環境や大型車両特有の稼働条件でも安定した性能が確認されれば、鉱山機械を含む産業用EV分野で、リチウムイオン電池の代替候補として存在感を高める可能性がある。