AIを人員削減の口実にしている企業があるとの見方が示された。写真=Shutterstock

ホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)のマイケル・クラチオス局長は、一部企業が本来予定していた人員削減をAI導入と結び付けて説明し、責任をAIに転嫁していると批判した。AIが雇用に与える影響と、企業が対外的にどう説明するかは分けて考えるべきだとの認識も示した。

Business Insiderが6日(現地時間)に報じたところによると、クラチオス局長は最近出演したポッドキャストで、企業が解雇の理由としてAIを持ち出すケースがあると述べた。

クラチオス局長は、ピーター・ディアマンディス氏が司会を務めるポッドキャスト「Moonshots with Peter Diamandis」に出演し、多くの企業が「いずれ実施するはずだった解雇をAIのせいにしている、あるいはAIを理由にしようとしている」と発言した。そのうえで、「その方がメディア受けがいいからだ」と説明した。ディアマンディス氏が、人員を減らしながら売上を伸ばせば株価の押し上げにもつながり得ると指摘すると、クラチオス局長は「まさにその通りだ」と応じた。

こうした発言の背景には、米企業の間でリストラの理由としてAIを前面に打ち出す動きが広がっていることがある。Uber、Snap、Blockなど複数の企業は、解雇の意思決定を説明する過程でAIに言及してきた。一方で、経済学者の一部からは、AIがすでに大規模な解雇を引き起こしているとする見方に疑問も出ている。米国の世論調査でも、AIによる雇用減少への懸念の強さが示されている。

クラチオス局長は、AIが雇用に及ぼす長期的な影響については楽観的な見方を示した。短期的には一部業務がAIに置き換わる可能性があるとしつつ、それと企業があらゆる人員削減をAIで説明することは別の問題だとした。

業界内でも同様の問題意識は出ている。OpenAIのサム・アルトマンCEOは2月、「正確な割合は分からないが、本来の解雇をAIのせいにする『AIウォッシング』が一部にある一方で、AIが実際に一部の仕事を代替しているケースもある」と述べていた。AIが労働市場に影響を及ぼしていることと、企業の発信がその影響を誇張することは切り分けて考えるべきだという趣旨だ。

クラチオス局長はさらに、AIを巡る悲観的な言説が社会の受け止め方を悪化させているとも批判した。政界や業界で、雇用喪失や危険性、生物学的脅威といった話ばかりが繰り返されれば、人々がそれに敏感に反応し、AIへの世論が悪化するのは当然だとの見方を示した。この点は、ジェンスン・フアン(NVIDIA CEO)ら一部関係者が、いわゆる過度な悲観論を批判してきた流れとも重なる。

発言の重みは、クラチオス局長の立場にも支えられている。同氏は上院承認を経てOSTP局長を務め、ドナルド・トランプ米大統領の科学技術政策を補佐している。過去にはピーター・ティール氏の下でキャリアを積み、第1次トランプ政権を経てScale AIで勤務した後、2024年大統領選後にホワイトハウスへ復帰した。

ホワイトハウスでは、昨年7月に公表されたトランプ政権の「AIアクションプラン」の策定にも関与した。同計画には、データセンターの許認可手続きを迅速化することや、過度なAI規制を導入する州の優先順位を下げることが盛り込まれている。最近では、Moonshot AIがAnthropicの「Fable5」を基に人気モデル「Kimi K3」を不適切に蒸留したとして、公の場で批判したこともある。

今回の発言は、AIが雇用市場に及ぼす実際の影響と、それを企業がどう説明し利用するかは区別して捉える必要があることを改めて示した。米政府でAI政策の実務を担う高官が「AI解雇」言説の誇張に言及したことで、今後のリストラを巡る情報発信やAI政策の議論に影響を与える可能性がある。

キーワード

#AI #雇用 #人員削減 #ホワイトハウス #OSTP #OpenAI #NVIDIA
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.