韓国科学技術院(KAIST)は8月7日、データ変化の速さに応じて応答特性を切り替えられるAI半導体素子「プログラマブル動的メムトランジスター(PDM)」と、その集積アレーを開発したと発表した。回復時間は約5倍、周波数特性は10倍超の範囲で調整でき、時系列データの予測実験では固定型半導体に比べて予測誤差を最大40倍低減したという。
開発したのは、KAIST電気電子工学科・半導体工学大学院のチェ・シンヒョン教授の研究チーム。
メムトランジスターは、記憶機能と演算機能を併せ持つ次世代半導体素子だ。計算と同時に過去の情報を保持できる一方、従来のAI半導体は入力信号に対する応答速度や状態保持時間が固定されており、変化速度の異なるデータを効率よく処理するうえで限界があった。
研究チームは、電気情報を蓄える電荷保存層と、電子を蓄積して半導体の応答速度を調整する電子捕獲層を、1つのトランジスター内に統合した。PDMは、データ入力時には電荷保存層で情報処理を行い、電子捕獲層が素子の回復時間を制御することで、データ変化の速さに見合った応答特性を選択できるとしている。
KAISTによると、実験では入力信号に反応した後の回復時間を約5倍の範囲で調整できた。高周波の繰り返し信号に対応する周波数特性も10倍超の範囲で調整できたという。速い情報と遅い情報が混在する時系列データの予測実験では、固定型半導体に比べて予測誤差を最大40倍低減した。
研究チームは、PDMを複数接続した集積アレーも試作した。実験では、ソフトウェアベースのAIシステムに近い精度を維持しながら、より低い消費電力で動作することを確認したとしている。
今回の素子は、設定した応答特性を電源供給なしで維持できる不揮発性も備える。商用半導体の製造で用いられるCMOSプロセスとの互換性があり、量産・商用化につながる可能性が高いとしている。
チェ・シンヒョン教授は「データの変化速度に合わせて、半導体が最適な方式で反応するAI半導体を実装した」とコメント。「自動運転車やロボット、ウェアラブル機器など幅広いAI機器の性能向上と消費電力の低減を支える中核技術になることを期待している」と述べた。
研究には、半導体工学大学院博士課程のキム・デウォン氏が筆頭著者として参加した。Samsung Electronics半導体研究所のオ・ヨンテク研究員とイ・ジェドクフェローも共著者に名を連ね、チェ・シンヒョン教授が責任著者を務めた。研究成果は国際学術誌「Nature Communications」に7月掲載された。