トランプ政権は、米デジタル資産市場構造法案「CLARITY法案」を巡り、公職者の倫理規定に関する超党派の妥協案づくりに入った。法案の成否を左右する最大の焦点は、市場制度そのものよりも、暗号資産を巡る利益相反への対応に移っている。
7日付のブロックチェーン専門メディアCoinPostによると、ホワイトハウスはCLARITY法案の審議で主要論点となっている倫理規定について、民主・共和両党の主張を踏まえた折衷案を協議している。
交渉が本格化した背景には、トランプ大統領に近い暗号資産推進派が、法案成立に向けて倫理面の論点整理を優先した事情がある。Fox Newsで暗号資産分野を担当するエレノア・テレット記者は、今週に入り、ホワイトハウス関係者が合意形成に向けて活発に動いていると伝えた。
ホワイトハウスの実務チームはこのほか、法執行機関や規制当局との意見調整も進めており、デジタル資産の規制枠組み整備に向けた協議を継続しているという。
もっとも、上院での審議日程は停滞している。暗号資産政策に関わる関係者の間では、先行きは不透明との見方が出ている。6日時点で、上院はCLARITY法案の討論終結動議(cloture)を申請しておらず、法案も公式日程に載っていない。
会期日程も逼迫している。上院は7日、継続予算決議案、大学スポーツ保護法案、司法長官候補のトッド・ブランチ氏の承認案などを処理する予定だ。一方、CLARITY法案は採決入りの手続きにも入っておらず、10日に予定される休会前の成立は事実上難しくなったとの分析が出ている。
上院は10日から休会に入り、会期は9月中旬に再開する見通しだ。休会前に成立しなくても直ちに廃案となるわけではないが、11月の中間選挙を控えた政治日程を踏まえると、審議が長引く可能性がある。
最大の争点は、トランプ大統領とその家族による暗号資産関連ビジネスを、倫理規定にどう反映させるかにある。共和党のトム・ティリス上院議員と民主党のルーベン・ガイエゴ上院議員は先週、公職者本人と配偶者による暗号資産の発行や支援活動を制限し、2029年1月まで適用するサンセット条項を盛り込んだ折衷案をホワイトハウスに提示したとされる。
これに対し民主党は、州司法長官に執行権限を与えることや、関連資産の売却基準を明確にすることも必要だと主張している。さらに、サンセット条項を設けず、大統領、副大統領、連邦議会議員全体に適用される恒久的な倫理規定を求めている。
一方の共和党は、これ以上の採決先送りは避けるべきだとの立場だ。上院銀行委員会のティム・スコット委員長は6日、Fox Businessのインタビューで、休会前にCLARITY法案を処理すべきだと強調した。
スコット委員長は、CLARITY法案について、消費者保護の強化に加え、デジタル資産市場の明確なルール整備やイノベーション促進のために必要だと訴えた。そのうえで、民主党が協議の過程で要求を変え続け、法案審議を遅らせていると批判した。
共和党内の足並みも今後の変数となる。スコット委員長は、共和党議員の支持は広がっているとしたうえで、党内が結束を維持できれば、民主党も採決参加を迫られるとの見通しを示した。
市場では、休会前に法案が成立するかどうかよりも、米国で進む暗号資産の制度整備の流れが維持されるかに関心が集まっている。Bitwiseの最高投資責任者(CIO)であるマット・ホーガン氏は、CLARITY法案が今週中に成立しなくても、市場への影響は限定的にとどまる可能性があると分析した。
ホーガン氏は、法案が廃案になるのではなく、議論が一時中断する公算が大きいと指摘。そのうえで、米証券取引委員会(SEC)による別途の規制整備や機関投資家の資金流入が続く限り、暗号資産の制度整備の流れは後退しないと説明した。
CLARITY法案の行方は、倫理規定を巡る妥協点を見いだせるか、さらに上院で採決手続きに入れるかにかかっている。休会前の日程が限られていることから、実際の審議は9月会期に持ち越される可能性が高まっている。