米上院でクラリティ法案の審議が停滞するなか、規制整備の遅れが結果として大手暗号資産企業に有利に働いているとの見方が強まっている。CoinbaseやCircleは資金調達や認可対応で先行する一方、小規模事業者や分散型金融(DeFi)プロジェクト、コミュニティ銀行は、制度整備を待つ間の不確実性と順守コストの負担を重く抱えている。
6日付のCryptopolitanやInvestor's Business Daily(IBD)によると、こうした格差は投資や認可の動きにも表れている。キャシー・ウッド氏のArk InvestはCoinbaseとCircleの保有を積み増した。Circleは7月、連邦レベルで国家信託銀行の承認を取得した。
一方、ジョン・スーン上院院内総務は、週内に最初の採決を実施する方針を示すにとどまっており、具体的な前進は見えていない。規制環境の変化に機動的に対応できる企業ほど、有利な立場を確保している構図だ。
当初、上院は7月中旬までに統合案をまとめ、下院採決までに約4週間の審議時間を確保する見通しだった。ただ、フィリバスターの終結には60票が必要で、共和党単独では足りず、民主党の協力が欠かせない。
上院銀行委員会は5月14日、共和党議員全員と民主党議員2人の賛成で法案審議を前進させた。その後、民主党は公職者による暗号資産事業への関与を制限する倫理条項の追加を求めた。
ただ、現時点の統合案にはその内容が盛り込まれていない。州司法長官に倫理違反への執行権限をどこまで与えるかを巡っても、協議が続いている。
法案は改定の過程で肥大化した。Galaxy Researchによると、1月時点で278ページだった草案は5月に309ページへ増加。さらに上院農業委員会の文案が統合され、70ページ超が追加された。増えた部分の相当部分は消費者保護条項が占めるという。
法案の柱は、トークンの性格に応じて米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)の管轄を分ける点にある。中央集権型取引所にはより明確な運営ルールが適用され、DeFiプロトコルも、バリデーターやオラクルの定義を含む運営基準の対象となる。
また、トークン発行体には開示義務が課され、仲介事業者には連邦登録とマネーロンダリング対策(AML)の義務が課される。こうした対応コストは、資金力のある大手ほど吸収しやすい構造だとみられている。
ステーブルコインの収益性も争点の一つだ。SkyBridge Capital創業者のアンソニー・スカラムーチ氏は、銀行業界が法案阻止に向け、終盤に入ってロビー活動を強めていると批判した。JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、同法案によって、銀行と同水準の安全装置を備えない暗号資産企業との競争が認められかねないとの懸念を示した。
一方、シンシア・ルーミス上院議員は、同法案をデジタル資産向けの「消費者に優しい開示フレームワーク」と評価した。エリザベス・ウォーレン上院議員の批判に対しては、16項目を超える不正資金対策を盛り込んでいると強調した。
市場も立法の遅れを織り込み始めている。ビットコインは先週、6万5000ドル前後から6万4300ドル水準に下落した。Bitfi Researchは、クラリティ法案の遅れに加え、米連邦準備制度理事会(Fed)のタカ派姿勢、Trump Mediaによる1億6500万ドル(約248億円)規模のBTC移動、Coldcardの脆弱性に伴う約1367BTCの損失を下落要因に挙げた。
投資家心理も弱含んでいる。7月のビットコイン現物ETFへの流入額は約2億500万ドル(約308億円)にとどまり、上場以降で月次ベースの最低水準を記録した。
予測市場Polymarketでは、2026年までにクラリティ法案が成立する確率は23%まで低下した。Galaxy Researchは5月中旬時点で67〜75%とみており、Citi Bankもビットコインとイーサリアムの見通しにおいて、規制の不確実性を主要変数の一つに挙げていた。
上院が法案を可決しても、なお手続きは残る。議会は、2025年7月に294対134で可決された下院案との調整を経て、ドナルド・トランプ米大統領の署名段階へ進める必要がある。今週の期限を逃せば、次の処理時期は9月にずれ込む可能性がある。
それも実現しなければ、中間選挙局面にのみ込まれ、規制の不確実性が長期化する恐れがある。そうした空白期間は、大手暗号資産企業に一段と有利に働く可能性が高い。
今回の争点は、法案が成立するかどうかだけではない。規制の空白が誰に有利に作用するのかが、より鮮明になっている。資金力と認可対応力を備えた大手は耐えられる一方、順守コストと不確実性は小規模事業者により直接的な負担としてのしかかっている。