Travel Walletが、急増する外貨建て先払いチャージ残高への対応として、金融当局から資本増強と収益改善を求められた。自己資本比率が規制基準を下回ったことを受けた措置で、同社は期限内に改善可能との見方を示し、2027年のKOSDAQ上場計画も維持する方針だ。
金融業界によると、金融委員会は7月31日の第14回定例会議で、2025年12月末時点の経営指導基準を満たさなかったTravel Walletなど電子金融事業者10社に対し、経営改善措置を求めた。
今回の措置は、ティモンとWemakepriceの未精算問題を受けて昨年12月に改正・施行された電子金融取引法に基づく、初の経営改善要求となる。法改正前は、電子金融事業者の経営環境が悪化しても、金融当局が資本増強などを直接求める制度がなかったが、改正法で基準未達事業者に対する改善要求の仕組みが新設された。
◆チャージ残高急増で自己資本比率が基準割れ
金融委員会はTravel Walletに対し、資本増強に加え、事業構造の見直しを通じた収益性改善を求めた。対象となった10社のうち、資本面だけでなく事業構造と収益性の改善まであわせて求められたのはTravel Walletのみという。
同社は、先払い電子支払い手段の未償還残高に対する自己資本比率の基準を満たせなかった。先払い電子支払い手段の発行・管理事業者には、利用者の未使用チャージ残高の20%以上に相当する自己資本を維持することが求められている。
Travel Walletは、利用者の増加に加え、為替変動によって外貨建てチャージ残高が急増し、必要な自己資本の規模も膨らんだと説明している。
同社によると、外貨建て先払いチャージ残高は現在4000億ウォンを超える。自己資本比率20%を当てはめると、チャージ残高が3000億ウォンなら必要自己資本は600億ウォン、4000億ウォンなら800億ウォンとなる。残高が1000億ウォン増えるごとに、必要自己資本も200億ウォン増える計算だ。実際の自己資本額や追加で必要となる増資規模は明らかにしていない。
外貨建てチャージは、利用者の需要だけでなく為替変動によってもウォン換算残高が短期間で大きく動く。このため同社は、今回の要請を事業特性を踏まえた資本管理と事業構造の強化を求める措置と受け止めているという。
◆IPO計画は維持、改善策を策定
Travel Walletは、金融委員会が求めた資本増強策と事業構造改善策の具体化を進めている。
金融委員会が定めた改善期限は、措置要求から6カ月後の2027年1月31日。期限までに改善措置を履行できなければ、金融委員会の議決を経て、一部または全部の業務停止命令を受ける可能性がある。
一方で、期限内に完了しなくても、具体的な改善実績があり、証拠資料を添えた今後の履行計画を提出した場合には、金融委員会の議決を経て6カ月以内の追加履行期間が認められる可能性がある。
今回の措置は、Travel WalletがIPOの主幹事を選定し、上場準備を本格化させてから約1カ月で出た点でも注目される。
同社は6月25日、NH Investment & SecuritiesとKB Securitiesを共同主幹事に起用し、2027年のKOSDAQ上場を進めると発表していた。独自の外為・決済インフラを高度化し、グローバルのデジタルウォレット事業とB2B決済インフラ事業を拡大することで、成長性と収益性を高める計画としている。
同社は、今回の経営改善要求とは別に、主幹事と従来計画に沿ってIPO準備を進めており、2027年のKOSDAQ上場目標に変更はないと説明した。
また、利用者資金の安全性やサービス運営への影響もないとしている。利用者がチャージした資金は会社固有財産と分離し、銀行預金や信託の形で全額を別途管理しているため、今回の自己資本比率の基準未達が利用者資金の損失やサービス停止につながるものではないとの立場だ。
金融委員会も、今回の措置は健全性指標の改善を目的としたものであり、チャージ制限や営業停止といった営業関連の措置は含まないと明らかにした。改善期間中も既存サービスは通常通り提供される見通しだ。
Travel Walletの関係者は「資本増強と事業構造改善を含む計画を進め、金融当局が求める基準を履行期間内に満たせる」とコメントした。そのうえで「具体的な増資手法や事業構造改善の内容は、協業先などと協議中のため公表できない」としている。