AIの普及に伴って新たなセキュリティリスクが顕在化するなか、対応ルールの整備や企業間連携の動きが広がっている。セキュリティ専業企業に加え、半導体やプラットフォーム企業も巻き込んだ取り組みが具体化しつつある。
NVIDIAが主導する「Open Secure AI Alliance(OSAA)」は、発足から1週間で初のワーキンググループ「SAFE(Shared AI Findings Exchange)」を設置し、AIのセキュリティ事故対応に関する提案を公表した。
提案には、AIに関するサイバーセキュリティ事故を非公開で報告できる仕組み、被害当事者への通知手順、責任追及より再発防止を重視した事後検証の枠組みなどが盛り込まれた。技術そのものを大きく変更する内容ではないが、まずは業界共通の対応ルールを整えることに重点を置いた形だ。
一方、OpenAIがテストしていたAIエージェントが想定外の挙動を示し、オープンソースAIモデル共有プラットフォームのHugging Faceをハッキングした事案を受け、Hugging FaceのCEO、クレム・デランジェ氏は、AI企業に対して侵害事案の開示を義務付けるべきだと主張した。
同氏は、強力なAIモデルの公開を止めることよりも、事故を透明性高く開示する制度の整備が重要だと説明している。
高度なAIの悪用や、AIが制御を逸脱して意図しない事故を起こす可能性への懸念も強まっている。独立系テスト機関2社は、AnthropicとOpenAIの最上位モデルが先月、第三者システムへの侵入を試み、一部では実際に成功した事例を追加で確認したと明らかにした。
AnthropicとMetaのAIモデルについても、テスト中にハッキング行為が確認されたという。
こうした動きは外部調査会社の見方とも重なる。CrowdStrikeは「2026 Threat Hunting Report」で、AIが攻撃ツールにとどまらず直接の攻撃対象にもなっており、脆弱性悪用のスピードも時間単位で加速していると指摘した。Gartnerは2029年までに、個人情報侵害事故の大半が直接的な個人識別情報(PII)の流出ではなく、AIが個人について生成した推論に起因するようになると予測している。
AIそのものの脆弱性を狙う攻撃への警戒感も強い。OpenAIのAIエージェントがテスト中にHugging Faceをハッキングした事案以降、有力企業のAIツールにも脆弱性が存在するとの指摘が相次いでいる。
企業の動きも活発だ。LG Uplusは、マネージド検知・対応(MDR)ソリューションを手掛けるPagonetworksを買収した。Pagonetworksの脅威検知、分析、対応の能力を内製化し、全社的なセキュリティ体制の高度化と法人向けセキュリティ事業の拡大を目指す。
LG Uplusの統合アカウント管理サービス「AlphaKey」は、クラウドサービスセキュリティ認証(CSAP)のSaaS標準等級を取得した。
RSUPPORTは、サイバーフィジカルシステム(CPS)セキュリティの専門企業AnNSpと協力し、N2SFと産業制御網に適用できる遠隔支援の事業モデルを共同で発掘する。
ATONはKISAと、悪意あるメッセージの事前遮断体制に関する業務協約を締結した。インターネット文字送信事業者に事前遮断体制を提供し、特殊付加通信事業者登録に必要な導入確認書を発給する。
NARU Securityは、KISAが進める「地域の侵害事故被害企業の検知および脆弱性診断」事業を担う。Epson Koreaは、セキュリティソリューション企業Nexpot Solutionと、偽造防止セキュリティラベル市場の拡大と高付加価値ラベルソリューションの開発に向けた業務協約を結んだ。オフェンシブセキュリティを手掛けるTheoriは、Woori Financial GroupにAIベースのブラックボックス型ペネトレーションテスト製品「Xint Web」を供給した。
Korea Quantum Computing(KQC)は、ドイツのサイバーセキュリティ・情報管理ソフト企業Data-Warehouse GmbHと戦略的業務協約を締結し、耐量子暗号(PQC)への移行プラットフォーム事業に乗り出す。
ネットワークセキュリティ企業XGATEは、新領域への拡張よりも自社の強みを持つ分野の競争力強化を優先する方針で、AI戦略を強化している。ESTsecurityは、Amazon Web Services(AWS)のパートナーネットワーク(APN)で「Select Tier」の認定を取得し、クラウドとAIセキュリティ事業に取り組む。
製品・サービス面での連携も進む。AWSは、AnthropicとOpenAIのAIコーディングツールに、コード脆弱性点検サービス「AWS Continuum」を連携する。これにより、両社のコーディングツール内から直接、脆弱性を検査できるようになる。
F5は「NVIDIA NeMo Guardrails」と統合し、企業向けAIセキュリティ機能を本番稼働中のAIアプリケーションに提供するAIネイティブソリューション「F5 AI Guardrails」を公開した。Palo Alto Networksは、フロンティアAI時代を見据えたネットワークセキュリティの研究成果と新製品をあわせて発表した。ServiceNowは、AmiisとVezraの買収後、自律型セキュリティ製品6種とAIセキュリティエージェント群を公開した。脆弱性対応やインシデント対応を、分析担当者が各段階で直接介入しなくても収束まで進められるよう支援するという。
Tera Securityは、AIエージェントが実際に有効だと検証した攻撃を防ぐため、ファイアウォールルールを自動生成する機能「Prevention」を発売した。