写真=Korean Air。Korean AirとArcher Aviationは、eVTOL「Midnight」の軍向け改修を開始した

Korean AirはArcher Aviationと提携し、電動垂直離着陸機(eVTOL)「Midnight」を韓国軍向けに改修する取り組みを始めた。兵員・貨物輸送、医療後送、捜索救難などでの活用を想定しており、既存機体を活用することで開発・配備期間の短縮を目指す。認証面では、Archerが米連邦航空局(FAA)と進めてきた手続きの知見を、韓国の制度整備にも生かす考えだ。

5日付の米ITメディアTechRadarによると、今回の協業は、新たな軍用機をゼロから開発するのではなく、既存のフライングタクシー向けプラットフォームをベースに、短距離任務に適した機体を確保する構想に基づく。

協業の柱となるのは、Archerが開発したMidnightを韓国軍の運用基準に合わせて改修する点だ。Korean Airが軍事運用に必要な改修を担い、Archerは技術支援に加え、耐空証明に関する認証手続きも支援する。両社は、新規設計と比べて開発と配備の期間を短縮できるほか、エンジニアリングや認証にかかる負担の圧縮も見込んでいる。

軍用モデルでは、兵員輸送、貨物輸送、医療後送、捜索救難のほか、特殊作戦支援での運用を想定する。短距離で機動的に運用できる航空手段としての活用が念頭にある。現在のMidnightは4人乗りで、航続距離は約161キロ、最高速度は約241キロ。長距離任務向けというより、比較的短距離の作戦行動に適した機体と位置付けられる。

今回の取り組みは、単なる軍輸送プラットフォームの確保にとどまらず、韓国の将来航空産業戦略とも結び付く。Korean Airの関係者は「軍用AAMの開発は、韓国が将来の中核航空戦力と産業主導権を確保するうえで大きな機会になる」としたうえで、「Archerとの協力を足がかりにAAM開発の重要な局面を先取りし、新たな防衛輸出モデルを構築していく」と述べた。

Midnightはすでに米空軍の評価を受けた経緯があり、将来的に米空軍が同種機の導入を進める可能性も指摘されている。低騒音で運用の柔軟性が高いeVTOLの導入を各国軍が検討するなかでの動きとされる。

認証面での波及効果も期待される。ArcherがFAAと進める認証プロセスは、韓国がeVTOLの認証制度を整備するうえで参考になる可能性がある。Korean Airは、Midnightプロジェクトを通じて蓄積する技術知見が、規制当局の制度設計や将来の商業運航の準備にも役立つとみている。

この動きは、韓国の都市型航空交通(UAM)事業とも接点を持つ。韓国のUAMプログラムは2028年の商用フライングタクシー導入を計画している。軍向け需要が先行して生産基盤を支えれば、民間事業者が本格導入に踏み切る局面で、供給体制の確保にもつながる可能性がある。

一方で、実際の導入時期は決まっていない。Korean AirとArcherは軍用機の引き渡し時期を明らかにしておらず、認証や調達のスケジュールは今後の両国政府の判断にも左右される。このため、今回の契約は軍用eVTOL導入に向けた方向性の確認とプラットフォーム検証の意味合いが強く、今後の認証・調達手続きが事業の進展を左右しそうだ。

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