アーサー・ヘイズ氏は、負債に依存したAIインフラ投資ブームが、2008年の金融危機に似た信用収縮を招く可能性があるとの見方を示した。そのうえで、危機後に政府が大規模な流動性供給に動けば、ビットコイン価格は100万ドル(約1億5000万円)を超え得ると予測した。
Cointelegraphが5日(現地時間)に報じたところによると、BitMEX共同創業者として知られるアーサー・ヘイズ氏は、データセンターや電力インフラへの投資について、「高成長テクノロジー株への投資というより、レバレッジをかけた不動産投資に近い」と指摘した。
ヘイズ氏は、投資家がAIインフラ投資の性格を見誤っているとみている。今回のAIブームは、2000年前後のような収益成長期待の局面ではなく、むしろ信用拡大の反動が表面化する2008年型の局面に近いという認識だ。貸し手が過大な建設資金を供給した後、AI向け設備投資が鈍化すれば、財務基盤の弱い借り手にしわ寄せが及ぶ可能性があるとした。
同氏は、こうしたAIインフラ投資の拡大が、暗号資産市場にとって新たな流動性変数になり得るとみる。信用サイクルが悪化した後の流動性供給が、最終的にはビットコイン相場の押し上げ要因になるという見立てだ。ビットコインはそれまで6万〜7万ドル(約900万〜1050万円)で推移し、5万ドル(約750万円)まで下落する可能性もあるが、その後に反発し、100万ドル(約1億5000万円)超まで上昇し得ると予想した。
Ethereumについても、年末までに5000ドル(約75万円)へ到達する可能性があるとした。ヘイズ氏は、自身が率いるMaelstromが、アウト・オブ・ザ・マネーのEthereumプットオプションを売りながら、意味のある規模のポジションを積み増す計画だと明らかにした。
今回の見通しは、ヘイズ氏が最近示してきた、AIと暗号資産の流動性を巡る持論の延長線上にある。5月13日には、米中のAI開発競争が銀行融資と法定通貨の供給拡大を促し、ビットコインに追い風になる可能性があると主張していた。
一方、6月4日には、大型AI関連銘柄の上場が暗号資産市場への資金流入を奪う可能性があると警告し、Hyperliquidのトークン「HYPE」とNEARを売却したと述べている。
AIブームを支える投資規模も急速に拡大している。Reutersによると、Microsoft、Meta、Oracle、Amazon、Alphabetが公表した投資計画・契約総額は、合計1兆900億ドル(約163兆5000億円)に達し、この大半がデータセンター関連だ。
この金額は、これら企業がすでに財務諸表に計上しているリース負債約2850億ドル(約42兆7500億円)の4倍近い。ただし、複数年にわたって支払う割引前の総額であり、全額を直ちに負債とみなせるわけではない。
財務負担の大きさには企業ごとの差もある。Oracleの負担はEBITDAに対して約4.3倍だったのに対し、Alphabet、Amazon、Microsoft、Metaはいずれも1倍を下回った。
同じAIインフラ拡大局面でも、レバレッジ負担の重い企業と、相対的に財務余力のある企業が分かれていることを示している。
S&P Globalのアナリスト、アンドリュー・チャン氏は、Oracleのデータセンターリースの構造を主要リスクの1つに挙げた。Oracleのデータセンターリース契約は15〜19年に及ぶ一方、顧客との契約期間は5年を超えないと指摘している。
長期リースと短期の顧客契約の満期ミスマッチが大きいほど、需要が鈍化した際の負担は膨らみやすいという。
もっとも、ヘイズ氏が描く「信用危機の発生→政府支援→ビットコイン急騰」というシナリオは、現時点ではあくまで仮説の域を出ていない。現時点で確認できるのは、AIインフラ投資の規模が急拡大していること、そしてそれに伴う財務リスクがビッグテック各社で一様ではないという点だ。
市場では、AI投資の拡大が今後の業績成長につながるのか、それとも信用負担として跳ね返るのかに加え、その影響がどの経路で暗号資産市場の流動性へ波及するのかが注目点となっている。