Ethereumコミュニティで、検証者に支払う発行報酬の一部を焼却する提案「EIP-8361」が議論を呼んでいる。DeFiプロトコル「Aave」の創業者、スタニ・クレチョフ氏はこの案に反対し、報酬の削減は供給集中の抑制ではなく、個人検証者の撤退を招いて分散性を損ないかねないと主張した。
8月5日、ブロックチェーンメディアのCoinPostによると、EIP-8361は検証者に支払われる発行報酬の一部を段階的に焼却し、Ethereumの新規発行の伸びを抑える内容だ。
現在、検証者の年率ベースの総利回りは、発行報酬と最大抽出可能価値(MEV)を合わせて約2.862%。提案が全面適用された場合、これが約1.476%まで低下し、約48%の減少になるという。議論は、研究者pa7x1の先行研究と、アンダース・エロフソン氏による改善案を踏まえて進んでいる。
提案の背景には、Ethereumの供給が一部主体に偏ることへの懸念がある。足元ではステーキング比率の上昇が続いており、取引所や現物ETFの発行体など一部の機関にETHが集中しかねないとの指摘が出ている。
これに対しスタニ氏は、報酬の引き下げはむしろ逆効果になり得ると反論する。検証者報酬が実質的にゼロに近づけば、採算性を重視する個人検証者は撤退を迫られる可能性がある一方、ETF発行体や取引所は事業運営や規制対応の観点からステーキングを続けやすい。その結果、機関の比重が高まり、ネットワークの分散性が弱まるおそれがあるという。
税務面も大きな論点として浮上している。スタニ氏は、個人が運用する32ETHの検証者を例に挙げ、提案どおりの仕組みになれば、報酬をいったん全額収益として認識したうえで、その一部が焼却される構造になり得ると説明した。この場合、課税対象額は変わらない一方で、実際の受取額だけが減る可能性がある。各国の税務当局が焼却分を損失として認めなければ、通常どおり運用していても実質赤字になりかねないとの見方だ。
さらに同氏は、Ethereumのステーキング利回りは単なる報酬水準ではなく、市場における利回り比較の基準として機能してきた点も強調した。現物ETFへの投資やDeFi融資、各種利回り商品の比較指標として使われてきただけに、大幅な利回り低下は投資需要を他のデジタル資産やドル建て金融商品へ向かわせる可能性があるとしている。
スタニ氏は、提案を進める前に、各国の税務上の取り扱いや利回り低下が投資需要に与える影響について、具体的なデータを示すべきだと主張した。報酬を過度に引き下げるのではなく、一定水準を下回らないよう下限を設ける案も提起している。
今回の論争は、Ethereumの発行量管理、分散性の維持、機関資金の流入のバランスをどう取るかという議論に広がっている。供給集中を防ぐための報酬調整が、個人検証者の離脱や税負担の増加を招く可能性が指摘されるなか、コミュニティでは削減幅や適用方法、最低利回りの設定の是非を巡る議論が続く見通しだ。