AI開発競争の主戦場が、モデル開発から半導体の確保へと移りつつある。Zero2Launchのベンチャーパートナー、アルビン・フー氏はX(旧Twitter)への最近の投稿で、AI競争の核心はより大規模なモデルではなく、チップにあるとの見方を示した。
フー氏によると、Amazon、Google、Microsoft、Metaは自社AIチップの開発に数十億ドルを投じている。外部からGPUを調達するよりも、自社設計チップを活用した方がAIインフラコストを30〜40%削減できるためだという。
背景には、学習中心だったAIの負荷が、推論へと急速にシフトしていることがある。フー氏は、推論について「学習済みAIモデルが実際の質問に答えたり、作業を実行したりするプロセスだ」と説明した。
その上で、「2030年にはAIシステムが1日に処理するトークン数が1京(10 quadrillion)に達する見通しで、その大半を推論が占める。これに伴い、AIインフラの設計そのものも見直しを迫られる」と指摘。「モデルだけを見ていると、競争が実際にどこで起きているのかを見誤る」と述べた。
今後のAI競争で優位に立つのは、最も高性能なモデルを開発する企業ではなく、半導体、データセンター、クラウドインフラ、AI向けOS、エージェント、さらには企業の業務フローまで含めたフルスタックを押さえる企業だとフー氏はみている。
同氏は「AI経済はソフトウェア革命からインフラ革命へ移行している」とも強調した。
AIチップ市場では引き続きNVIDIAが主導権を握る。ただ、ビッグテック各社の間では、NVIDIA製GPUに加えて自社ASIC(特定用途向け半導体)を併用する動きが広がっており、NVIDIAのシェアは徐々に低下しているという。
AnthropicがAWSのAIチップ「Trainium」を巡って10年の長期契約を結んだことも、こうした流れの延長線上にある。フー氏は、これは単に採用するチップを選んだという話ではなく、AIインフラ全体の主導権を自ら握ることが長期的な生存力につながるとの判断に基づくものだと説明した。
クラウド事業者は、AIインフラの供給主体として存在感を強めている。OpenAIやAnthropicによる大規模なコンピューティング契約は、Microsoft、Oracle、Google、Amazonに数千億ドル(数十兆円)規模のインフラ需要をもたらしているという。
半導体の生産体制にも変化の兆しが出ている。フー氏は「2030年代末までに、米国は世界の先端半導体(5ナノメートル以下)生産の30〜35%を直接担う見通しだ」とした上で、海外生産への依存を減らし、AIインフラの自立性を高める方向に向かっていると述べた。