韓国公正取引委員会(公取委)は7月1日、Googleがアプリ市場での支配的地位を乱用した疑いがあるとして、審議手続きに入った。対象となるのは、Googleが国内外の主要ゲーム会社と結んだ「GVP(Games/Google Velocity Program、通称プロジェクト・ハグ)」契約。公取委は、是正命令や課徴金の賦課を検討している。
公取委事務局は、Google LLC(米国)、Google Asia Pacific Pte. Ltd.(シンガポール)、Google Korea LLCに対する公正取引法違反の疑いについて、行為の事実関係や違法性、措置案を盛り込んだ審査報告書を委員会に提出した。報告書は同日、被審人側にも送付され、これをもって審議手続きが始まった。
発端となったのは、経済正義実践市民連合、韓国ゲーム利用者協会、韓国ゲーム消費者協会による申告で、2024年11月に受理された。公取委はその後、海外訴訟資料の分析や現場調査、参考人調査などを進め、審査報告書を作成した。公取委は、審査報告書はあくまで審査官が調査を通じて把握した違法性や措置意見を記したものであり、委員会の最終判断を拘束するものではないとしている。
チョン・ヒウン市場監視局長は同日のブリーフィングで、「審査官が調査を進めた結果、公正取引法違反の疑いがあると判断した」と述べた。
GVP契約は2019年に締結が始まった。公取委が違反行為の対象期間とみるのは、2019年7月から2026年3月までの約6年9カ月だ。契約先は、Activision Blizzard KingやRiot Gamesなど、Googleのアプリ市場で売上上位にあるゲーム会社22社。このうち国内企業はNC、Nexon、Netmarble、Pearl Abyss、Com2uSの5社で、残る17社は海外企業という。
公取委によると、契約ではゲーム会社に対し、配信時期や品質面でGoogle Playを他のアプリストアより有利、または少なくとも同等の条件で扱う「最恵待遇」を求める一方、Google側はクラウド、広告、YouTubeなど自社のプレミアムサービス利用費を支援していた。
チョン局長は品質条件について、「アプリで提供する機能や特典を、他のアプリストア向けアプリより良い水準、あるいは少なくとも同等に維持するよう求めたものだ」と説明した。ここでいうGoogleのアプリ市場とは、Googleが運営するGoogle Playを指し、One storeなど競合ストアとは区別される。
支援の仕組みは、Google Play内でのゲーム売上が増えるほどGoogleの支援額も増える構造だった。チョン局長は、「累進的な構造自体が違法というわけではない。ただ、最恵待遇を条件として課した点に競争制限的な要素があり、累進構造によってその効果がさらに大きくなったと判断した」と述べた。
審査官は、Googleが最恵待遇条項と売上連動型の支援方式を通じて、ゲーム会社が競合アプリストアに参入する誘因を著しく低下させ、One storeなど競合事業者の事業活動を妨げたとみている。契約を結んだゲーム会社が別のアプリストアを新たに立ち上げる可能性まで狭め、事実上Googleとの排他的な取引を強いたとの判断も示した。
この行為の影響を受けたAndroidアプリ市場の関連売上高は92億1777万ドル(約14兆1600億ウォン)と算定した。算定は国内売上高ベースで行った。公取委によると、国内のAndroidアプリ市場におけるGoogleのシェアはおおむね80%を超える。
審査官は、こうした行為が公正取引法第5条第1項に定める事業活動妨害行為(3号)と排他条件付取引行為(5号)に当たる市場支配的地位乱用だと判断し、是正命令と課徴金賦課を求める意見を付した。今後の委員会審議を経て、関連売上高の最大6%まで課徴金が科される可能性がある。単純計算では上限は8496億ウォン規模となる。過去の違反歴は課徴金算定で加重事由となり得るが、最終的な賦課の可否や金額は委員会審議で決まる。
Googleは、審査報告書の受領日から8週間以内に書面意見を提出できる。証拠資料の閲覧・複写申請や意見陳述の機会も認められ、防御権は保障される。公取委は本件を、アプリ市場の実質的な競争回復に向けた重要案件と位置付けており、手続きが終わり次第、全員会議を開いて最終判断を下す方針だ。
チョン局長は、GVP契約を通じて経済的支援を受けたゲーム会社の責任について、「Googleとの関係では、Googleの圧倒的な地位を考えると、ゲーム会社が支援を拒むのは事実上難しかった可能性がある。単に経済的支援を受けたことだけで、ゲーム会社が公正取引法に違反したとみるのは難しい」と述べた。今回の案件は談合を調べるものではなく、Googleによる市場支配的地位乱用への調査と措置だとも強調した。
一方、Googleによるアプリ内決済の強制を巡る問題は別案件で、特定決済手段の強制を禁じる電気通信事業法が優先適用されるため、放送通信委員会が所管している。公取委は、放送通信委員会と継続的に協議しながらモニタリングを続けるとしている。
今回の案件は、Googleが2016~2018年にOne storeを狙い撃ちして排除したとして、2023年に制裁を受けた事案とは性格が異なる。チョン局長は、当時はOne storeで配信しないことを条件に支援していたのに対し、今回は他のアプリストアでの配信自体は認めつつ、Google Playと少なくとも同等の時期や条件を求める方式だと説明した。2023年の制裁後、Googleが別の手法を講じた結果だとの見方を示した。