メモリ価格の上昇を受け、スマートフォンやPC、テレビ、タブレットなど電子機器全般の原価が少なくとも15〜40%上昇する見通しだ。メモリ高が完成品の出荷価格に波及する局面に入った。
業界によると、メモリのスポット価格指数であるDXIは今月12日時点で、直近1週間に4.9%上昇し、1カ月では16.0%上がった。品目別では、DDR5 16Gbが週間で3.3%、NAND(MLC)64Gbが1カ月で30.8%上昇した。
メモリ高への警戒感は以前からあったが、前年は大きな混乱には至らなかった。PCやスマートフォンなど従来型製品の需要回復が想定を下回り、メーカー各社が値上がり前に在庫を積み増したことで追加調達を先送りし、価格上昇圧力が和らいだためだ。
ただ、2026年は状況が異なるとの見方が強い。これまでは価格上昇局面でも供給が後追いで増え、上昇ペースが鈍るケースが多かったが、今回はAIデータセンター向けやHBM向けに生産能力が振り向けられ、汎用メモリの供給が構造的に逼迫している。価格が上がっても供給が追いつきにくく、上昇が一時的にとどまらない可能性があるという。
SK証券によると、前年のフラッグシップスマートフォンでは、原価に占める半導体系部材の比率が53%に達した。内訳はアプリケーションプロセッサ(AP)が28%、メモリと通信部品がそれぞれ12%水準。ディスプレイは15%、カメラは11%、筐体などの内外装材は7%、その他は15%だった。
半導体の比率が過半を占めるだけに、メモリとAPが同時に上昇すれば、完成品原価への影響はより直接的になる。
特にメモリは前年比で3桁の上昇も有力視され、追加値上げの可能性も指摘されている。AP、通信モジュール、基板なども少なくとも20〜30%、高い場合は50%以上の同時上昇が避けにくいとの見方だ。
半導体以外の部材も下落余地は大きくない。ディスプレイとカメラは継続的な高性能化で単価の下落が限られ、内外装材は金属価格の上昇、補助材料は化学原料コストの上昇で負担が増している。電池も金属コストを背景に価格圧力が強い。さらに関税負担も加わる。AppleのiPhoneやGalaxyなど一部を除き、多くの完成品が関税の影響を受けるという。
◆Appleは増産、Samsung Electronicsや中国勢は減産へ
メモリ不足は新製品の設計にも影響を及ぼしている。Appleは最近開催した世界開発者会議(WWDC)で、200億パラメータ級のオンデバイスAIモデル「AFM3 Core Advanced」を公開した。
このモデルは、すべての重みをNANDに保存し、プロンプトごとに必要な一部パラメータだけをDRAMに読み込んで実行する仕組みだ。DRAMの容量確保や価格、消費電力の負担を抑える設計で、十分なメモリを確保しにくい環境を踏まえた対応とみられている。
エッジAIやオンデバイスAIの拡大が加速するほど、メモリ需要は膨らむ。ユジン投資証券は、AIと半導体需要がデータセンター向けだけでも需給を逼迫させており、そのボトルネックと価格上昇の影響が高性能機器や素材分野にも広がると見通している。
完成品メーカーの対応は分かれている。スマートフォン市場では、高い収益性を背景に販売価格の引き上げを最小限に抑えつつシェア拡大を狙うAppleと、原価負担を踏まえて慎重姿勢を強める競合各社で戦略が分かれている。
SK証券によれば、AppleはiPhoneの出荷台数を前年の2億4000万台から2026年に2億5000万台へ増やす計画で、すでに増産に入った。2027年も5%以上の追加増産の可能性があるという。
一方、Samsung ElectronicsのGalaxyは販売のマイナス成長が見込まれ、中国メーカーは20〜35%の減産を計画している。
業界関係者は「原価上昇分は、消費者、完成品メーカー、部品メーカー、原材料メーカーのいずれかが負担せざるを得ない構造だ」とした上で、「供給不足が明確な部品であるメモリの需給は、今後さらにタイトになる」と述べた。