ハンガリー・ブダペストのサトシ・ナカモト像。写真=Shutterstock

Bitcoinはサトシ・ナカモトの単独発明ではなく、1990年代後半からサイファーパンク・コミュニティで蓄積されてきた研究成果の延長線上で生まれた――。BlockstreamのCEOで暗号学者のAdam Back氏が、こうした見方を示した。

ブロックチェーンメディアのU.Todayが18日、報じた。Back氏は、Bitcoinの基本構造は1997年ごろから続いていた議論や実験の積み重ねの上に成り立っていると説明した。

同氏によると、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)を用いた分散型通貨の基本概念は、Bitcoinのホワイトペーパーが公表される以前から、非公開のメーリングリストで議論されていたという。ピーター・トッド氏が若い頃に触れた「Bitcoinを作るための試み」についても、当時は複数のグループが似た構想を並行して進めていた文脈で捉えるべきだとした。

そのうえでBack氏は、当時サイファーパンク陣営が使っていた「Bitcoin」という言葉を、現在のBitcoinという特定のプロジェクト名として受け取るのは適切ではないと指摘した。当時は個人間取引(P2P)の電子マネー構想を指す、一般的な表現に近かったという。

Back氏はソーシャルメディアへの投稿で、「1997年の時点で人々がBitcoinのような仕組みを作ろうとしていたのは周知のことだ」と述べ、自身はそれを「net cash(Hashcash)」と呼んでいたと説明した。

こうした文脈の中で、Bitcoinの構成要素の1つであるHashcashにも改めて注目が集まっている。Back氏は、サトシがネットワークの中核要素を一から作り上げたのではなく、自身が1997年にスパム対策として開発したHashcashアルゴリズムを基盤の1つとして採用したと述べた。

実際、サトシはBitcoinのホワイトペーパーでHashcashに直接言及し、出典としてBack氏の名前を記している。

一方でBack氏は、サトシの最大の功績は別の点にあると評価する。すなわち、二重支払い問題を解決し、自身やハル・フィニー氏、ニック・サボ氏らの間に分散していた構想を、実際に機能する単一のプロトコルへ統合した点だという。

Back氏は、Bitcoinの独創性は無からの発明にあったのではなく、既存の暗号技術やアイデアを実用的なネットワークとして実装したことにあるとの見方を示した。

今回の発言は、SNS上でBitcoin創設者の匿名性を解明しようとする動きが続く中で出た。過去にNew York Timesがサトシ候補の1人としてBack氏の名前を挙げたこともあるが、同氏はそうした推測を一貫して否定してきた。

また、複数人物の文体が似て見える理由については、限られた専門家集団の中で同じ専門用語を共有しながら議論していたためだと説明している。

ピーター・トッド氏も同様の立場を示している。HBOのドキュメンタリーでサトシだと名指しされた同氏は、報道機関や投資家による執拗な追跡は、業界の古参にとってセキュリティ上の脅威を高めるだけだと指摘した。

Bitcoinの起源をめぐる議論は、単なる実名探しから、どの技術や思想が現在のBitcoinへと収れんしたのかを問い直す段階に移りつつある。Back氏の説明は、Bitcoinを特定個人の単独発明としてではなく、サイファーパンクが長年積み重ねてきたデジタル通貨の実験の集大成として捉えるべきだという問題提起といえそうだ。

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