写真=Reve AI

企業内データを横断的に活用する「企業向けAIエージェント」の主導権争いが激しさを増している。データ基盤ベンダーから業務アプリケーション企業まで参入が広がり、競争の焦点は、AIがどこまで社内文脈を理解できるか、そして安全に運用できるガバナンスをどう担保するかに移っている。

従来は競合領域が重なりにくかった企業同士も、AIエージェントを軸に戦略を組み替え始めた。データ分析基盤のSnowflakeが、クラウドCRM大手のSalesforceやERPで知られるSAPと連携しつつ、AIエージェント基盤では競合する構図も珍しくない。

各社の狙いは明確だ。自社製品に閉じず、他社システムも含めた企業内データを最も安全かつ効果的に活用できるAIエージェント基盤を握ることにある。利用対象もIT部門にとどまらず、現場部門へ広がっている。

Snowflakeは自社データプラットフォームに加え、SAPのERPやSalesforceのCRM上のデータも分析できる方向へ領域を拡大している。一方のSalesforceは、自社AIエージェントからSnowflake上のデータを利用できるようにする方針を示している。SAP、Salesforce、Snowflakeを併用する企業にとっては、どの基盤を中心に据えるかが重要な判断材料になりそうだ。

こうした動きを後押ししているのが、外部システムへのデータアクセスを可能にするModel Context Protocol(MCP)などの技術進展だ。これを背景に、企業向けAIエージェント基盤を狙う各社の動きは一段と加速している。

データプラットフォーム企業はアプリケーション領域へ踏み込み、アプリケーション企業はデータ基盤への投資を強める。企業向けAIを巡る競争軸そのものが変わりつつある。

Microsoftは、先ごろ開催したBuild 2026で、AIが企業の文脈を理解するための新製品3種を公開した。Microsoft Fabric部門のCTO、アミール・ネツ氏は「企業向けAIは、組織がどう機能しているかを理解する内部関係者のような存在であるべきだ」と述べ、「エージェントを信頼して動かすには、組織の記憶、つまり『コンテキストレイヤー』が必要だ」と強調した。

Snowflakeも年次イベント「Snowflake Summit」で、AIが企業文脈を理解するためのプラットフォーム戦略を打ち出し、関連サービスを相次いで披露した。単なるデータ保存・分析基盤にとどまらず、企業がAIエージェントを活用する際の入口としての役割を拡大する方針を明確にしている。

競合のDatabricksは6月17日、構造化・非構造化データ、分析・運用データを含め、Databricks内外を問わず、あらゆるデータを基盤に業務の自動化と連携を支援する「Genie One」を発表した。

Genie Oneは、ビジネスデータ向けのAI製品群「Genie」に含まれる。Databricksは、データ、文書、タグ、コンテンツ、アプリ、人材など、組織内の要素から導き出される知識ネットワーク「Genie Ontology」を重視している。同社はこれを、企業向けAIにおける課題の一つである「データを通じた業務理解」を支える、新たな自己改善型のコンテキストレイヤーだと説明している。

SAPも5月、米フロリダ州オーランドで開いた「Sapphire 2026」で、AI競争の勝負どころはモデルそのものではなく、企業文脈とガバナンスにあるとの戦略を示した。SAPのCTO、フィリップ・ヘルツィヒ氏は「大規模言語モデル(LLM)は差別化要因ではない。OpenAIでもAnthropicでも構わない。重要なのは、エージェントが正しいビジネスエンティティを理解し、適切なデータにアクセスし、実際の企業データで検証できるかどうかだ」と述べた。

エンタープライズSaaS検索を出発点とするGlean Technologiesも、企業データを基盤にAIモデルやエージェントを動かす企業向けAIプラットフォーム事業を拡大している。企業検索で培った強みを生かし、組織横断でデータを活用する自律型エージェントやAI業務ソリューションのラインアップを広げている。

Gleanは、全社のデータソースをもとに水平型のAIエージェントを構築できるよう支援する。AWS Marketplaceで提供するエージェント開発プラットフォームを通じて、企業はセキュリティを維持したまま、本番環境にAIを適用できるシステムを構築できるとしている。

SiliconANGLEによると、Gleanのパートナーシップ担当副社長、ジュビン・イラニ氏は「Gleanは従業員が答えを見つけるのを支援する企業向けAIプラットフォームだ」と説明したうえで、「実際の社内データに基づいてエージェントを構築し、業務を実行できるため、各部門は社内の知識リポジトリを活用しながら安全にAIを導入できる」と語った。

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