写真=IITP提供。ホン・ジンベIITP院長

情報通信企画評価院(IITP)は6月17日、AI半導体、フィジカルAI、次世代ネットワークなどを横断するフルスタック戦略を打ち出した。エージェンティックAIやフィジカルAIの活用が広がる「AX 2.0」時代を見据え、国防・公共分野への展開やAI人材育成も加速する。

IITPは同日、ソウル市麻浦区のAI・SWマエストロ研修センターで「2026成果メディアデー」を開催し、AI・ICT分野の研究開発(R&D)と人材育成の成果、今後の事業方針を公表した。

IITPは科学技術情報通信部傘下のR&D管理専門機関。2026年は、技術開発に1兆1370億ウォン(約1251億円)、人材育成に5740億ウォン(約631億円)、基盤整備・技術事業化に1706億ウォン(約188億円)を投じ、総額1兆8996億ウォン(約2089億円)規模を支援する。

ホン・ジンベ院長はこの日、AI半導体、AIモデル、フィジカルAI、次世代ネットワーク、サイバーセキュリティ、AX普及を国家競争力を左右する中核技術に位置付けた。個別技術の性能競争にとどまらず、半導体、ネットワーク、モデル、サービスをつなぐフルスタックの構築力が重要になるとの認識を示した。

◆エージェンティックAI・フィジカルAIが拡大、AX 2.0が本格化

IITPは、AIの適用領域がデジタル空間にとどまらず、製造、ロボット、自動運転など物理環境へ広がり、AX 2.0が本格化していると分析した。産業界が求める人材像も、課題設定力に加え、AIの融合設計や再設計、複数AIシステムの統合能力を備えた人材へと変化しているという。

ホン院長は「国家レベルで中核技術を確保することが不可欠だ」と強調。その上で「AX 2.0の競争は個別技術の競争を超え、AIモデル、フィジカルAI、AI半導体、ネットワーク、サイバーセキュリティを含むフルスタック競争へ広がっている」と述べた。

IITPはAX 2.0に備え、フルスタック技術への支援を強化している。AI半導体では2020年から、次世代知能型半導体やプロセッシング・イン・メモリ(PIM)半導体の開発を支援。FuriosaAI、Rebellions、DeepX、Mobilintなど国内AI半導体企業の成長基盤づくりを後押ししてきた。

K-クラウド技術開発事業では、データ処理装置(DPU)やCompute Express Link(CXL)など、次世代AIコンピューティング技術の確保を支援している。MangoBoostはAMD MI300X GPUと連携するDPU技術で、NVIDIA H100を上回る価格性能比を記録したという。

AIモデル分野では、国内初のAI R&D事業「エクソブレイン」を起点に、超軽量マルチモーダル視覚言語モデル(VLM)の開発を支援した。IITPは、こうした投資がSaltlux、Konan Technology、MAUM AI、NC AIなど国内AI企業の成長につながったとしている。

2026年には、科学技術情報通信部とIITPが「4大国民体感型エージェンティックAI」の開発に着手する。対象は、全社業務の革新、シミュレーション設計支援、相談、医療用超音波解析など。利用者の目標を理解し、業務遂行を支援するエージェンティックAIプラットフォーム技術も開発する。

フィジカルAIでは、自律知能プラットフォーム、ヒューマノイド量産体制、エッジAI半導体技術の確保を進める。汎用ファウンデーションモデルやワールドモデルを通じ、フィジカルAIの中核技術開発を支援する方針だ。

◆6G、衛星通信、サイバー防衛を強化 国防AI展開も

次世代ネットワーク分野では、5GとオープンRANへのR&D投資を通じ、SolidやOE Solutionsなど国内企業のグローバル通信機器・部品サプライチェーン参入を支援した。低軌道衛星通信の技術開発には、2025~2030年に3004億ウォン(約330億円)を投じる。2028年には国内6G統合デモを実施し、早期商用化に備える。2030年には6G低軌道衛星を打ち上げ、地上網と衛星網の連携を目指す計画だ。

サイバーセキュリティでは、ゼロトラスト、ソフトウェアサプライチェーン、クラウドの多層防御を軸に防御体制の高度化を進めている。IITPによると、国内企業の多くはAI搭載CCTV向けAIシステム・オン・チップ(SoC)の国産化を進めており、グローバルセキュリティ企業との協力も拡大しているという。自律型AI攻撃への対応では、セキュリティ特化型AIエンジンを中核とする「AIサイバーシールドドーム」も推進する。

ホン院長は、国内サイバーセキュリティ技術の潜在力にも言及した。「特に米国のインテリジェントCCTV市場は、中国との関係の影響もあり、韓国企業にとって大きな可能性がある市場だ」と述べた。さらに「国内の準同型暗号技術は、2位との差が大きいトップ水準にある」と語った。

IITPは、AI・ICT R&Dの成果を国防、公共、産業現場に適用するAX普及事業にも力を入れる。国防分野では、民間AI技術を軍の需要と結び付ける国防実証事業と「AXスプリント」を推進する。大田、竜山、良才、釜山、板橋の全国5拠点には軍・産・学協力センターを整備し、実証環境やデータ安心ゾーンを提供する。

公共分野では、ディープフェイク、違法撮影物、行方不明、自殺など国民の安全に関わる課題にAI技術を適用している。ディープフェイク検知技術「アイギス」は、2025年の大統領選挙と2026年の地方選挙で、約3万5000件の有害ディープフェイク遮断に活用された。違法撮影物のリアルタイム検知技術は、Naver、TikTokなど主要26プラットフォームに適用された。緊急救助向けの3次元高精度測位技術はソウル市内31警察署に拡大され、行方不明や自殺関連の約2000件に活用されたという。

ホン院長は「今後は国防AXの適用範囲と軍・産・学拠点センターの運営地域を拡大し、国防AI戦略プロジェクトを通じてK-パランティアを育成する」と述べた。

◆AI人材育成を強化 トップ層から実務人材まで

AI・ICT人材育成では、トップ研究人材から実務人材までをカバーする多層的な体系の構築を目標に掲げる。ホン院長は「市場をけん引できる1%の人材が重要だ」とした上で、「トップ層の若手研究者支援に加え、AX大学院やSW中心大学も拡大する」と説明した。

2026年には、AI中心大学とAX大学院をそれぞれ10カ所新たに選定する。大学ICT研究センターとAI若手研究者支援プログラムを通じ、研究人材の育成も進める。ソフトウェア中心大学42カ所、地域知能化革新人材育成事業17カ所を通じ、地域のAI・ソフトウェア教育も拡大する。地域大学と企業の共同R&D、事業化支援を通じて、若年人材の首都圏流出を抑え、地域のAX転換を後押しする考えだ。

ホン院長は「人材を継続的に育成し、その人材が地域AXを支える役割を担うことを期待している」と述べた。

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