中国のインフラ・不動産主導の大規模建設が終息局面に入り、世界の鉄鋼やセメントをはじめとする資源需要の前提を見直すべきだとの分析が出ている。長年にわたり世界の原材料需要を押し上げてきた中国の建設需要が構造的な減速局面に入っており、資源スーパーサイクルの見通しにも影響を及ぼす可能性があるという。
EV関連メディアのCleanTechnicaは15日(現地時間)、中国の大規模なインフラ・不動産投資を恒常的な成長要因とみなす見方は、もはや成り立たないと報じた。
背景にあるのは、中国の需要構造の変化だ。住宅、道路、鉄道、港湾、送電網、上下水道、産業団地といった現代経済を支える基盤インフラは、整備初期の集中投資が一巡すれば、同じ勢いで新設需要が続く性格のものではない。
今後は新規建設よりも、維持管理、補修、更新、選択的な拡張が需要の中心になるとみられる。過去のような素材需要の急拡大より、既存資産の維持・更新の重要性が高まるという見方だ。
中国はこの数十年、世界の原材料市場の方向性を左右する存在だった。大規模な都市化、国家主導の投資、不動産中心の成長戦略、製造業の拡大が重なり、鉄鋼、セメント、石炭、鉄鉱石、建設機械の需要を大きく押し上げてきた。
現在も中国は世界の鉄鋼・セメント消費の約半分を占める。ただ、そうした地位を支えてきた不動産・インフラ主導の成長モデルは、すでに転換局面に入ったというのが今回の分析の出発点だ。
実際、各種指標にも変化が表れている。中国の人口はすでに減少局面に入り、世帯形成のペースも鈍っている。
不動産の着工面積、土地売却規模、デベロッパーの財務状況、住宅購入意欲はいずれも、過去の拡大局面とは異なる動きを示している。CleanTechnicaは、これを単なる景気循環ではなく構造変化と位置付けた。
鉄鋼市場では、その差がより鮮明だ。世界鉄鋼協会によると、2025年の中国の粗鋼生産は9億6080万トン。世界2位のインドは1億6490万トンで、中国は約6倍の規模に達する。
この差は、インドが高成長を続けたとしても、中国の需要減をそのまま代替するのが容易ではないことを示している。
セメント市場でも事情は同じだ。国際エネルギー機関(IEA)によると、中国は2022年時点で世界のセメント生産の約51%を占めた。セメントは道路、橋梁、地下鉄、港湾、ダム、上下水道施設など、大規模都市化の過程で大量に使われる資材であるだけに、中国需要の変化が市場全体に及ぼす影響は大きい。
同メディアは、中国のセメント需要が減少しても、それを同規模で吸収できる「第2の中国」は見当たらないと指摘した。
新興国への期待についても、見直しが必要だという。インドネシアやアフリカ、中南米の国々では、住宅や送電網、交通・物流インフラの整備余地がなお大きい。
ただし、これらの国・地域の成長モデルは中国とは大きく異なる。サービス業比率の上昇、デジタル経済の拡大、資本制約、気候リスクといった要因が、発展のあり方そのものを変えつつあるためだ。
とりわけ有力候補とされるインドについても、同メディアは「インドは別の国旗を掲げた2005年の中国ではない」と評した。鉄道、道路、送電網、再生可能エネルギー、データセンターなどで大規模投資が進む一方、都市化の形態、土地制度、産業構造、資金調達環境は中国と根本的に異なるからだ。
そのため、鉄鋼やセメント需要が増加するとしても、中国が過去に示したような規模の原材料消費が再現される可能性は低いとみられている。
こうした前提の変化を踏まえ、長期見通しも修正が迫られている。CleanTechnicaは、2050年までの世界の粗鋼需要が年約16億トンの水準で横ばい、あるいは減少に向かう可能性があるとした。人口増加や経済成長に対し、中国が過去に示した高い資材投入度を単純に当てはめる手法は、現実とずれ始めているという。
セメントについても同様で、今後は中国型の大規模新設より、低炭素の代替素材、設計効率の改善、維持管理中心の需要構造が広がる可能性が高いとした。
影響は鉄鋼やセメントにとどまらない。石炭、鉄鉱石、ばら積み船輸送、建設機械、産業用熱源、ディーゼル物流需要など、中国の建設ブームに依存して成長してきた幅広い産業に波及する可能性がある。
同メディアは、中国が主要素材市場の「物語の半分以上」を占めてきたとしたうえで、「世界の残りは20年前の中国ではない」と強調した。中国の建設ブームを基準に将来の原材料需要を見積もる従来のアプローチは、もはや通用しない可能性があると警鐘を鳴らしている。