SpaceXが750億ドルを調達する史上最大の新規株式公開(IPO)を実施した。株価は上場直後から堅調に推移したが、イーロン・マスク氏への議決権集中、巨額赤字、AI向け大型契約、将来の希薄化リスク、Teslaとの統合観測など、上場後の評価を左右する論点も多い。
米TechCrunchが15日(現地時間)に報じたところによると、SpaceXは5億5560万株を1株135ドルで公募し、ナスダックに上場した。これにより、マスク氏の資産は1兆ドルを超え、世界で初めて資産1兆ドルを突破した人物になった。
株価は滑り出しから強かった。SpaceX株は12日、ナスダックで150ドルで取引を開始し、公募価格を11%上回った。取引時間中には上昇率が一時30%まで拡大し、終値は160.95ドルと公募価格比19%高だった。15日にも午後の取引で一時186.15ドルまで上昇し、引き続き15%超の上昇基調を保った。Robinhoodは、上場直後の数時間に同社の取引プラットフォームで過去にない水準のトラフィックが発生したと明らかにした。
今回の上場は、規模だけでなくガバナンス面でも市場の関心を集めた。SpaceXが提出したS-1登録届出書によると、マスク氏は議決権の約85.1%を握る。上場後も経営支配は実質的に同氏へ集中する構図だ。マスク氏は株価上昇後、X(旧Twitter)に「言葉では言い表せないほどSpaceXの従業員を愛している」と投稿した。
主幹事団の手数料収入も巨額となる見通しだ。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、手数料総額は約5億ドルに上る。インサイダーや従業員にも相応の利益が及ぶとみられ、ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、SpaceXの従業員4400人が百万長者入りする可能性があると試算した。
一方で、巨額赤字は引き続き投資判断の重荷となる。SpaceXは2025年に180億ドル超の売上高を計上したが、純損失は49億ドルだった。創業以来の累積損失は370億ドル超に達する。Starlinkの衛星インターネット事業を軸に成長期待は強いものの、投資家にとっては収益性改善の道筋を見極める必要がある。
上場前に確保した大型契約も注目材料だ。SpaceXは財務体質の改善に向け、AI向け計算資源の供給契約を相次いで結んだ。Anthropicは月12億5000万ドル、Googleは月9億2000万ドルをSpaceXに支払うことで合意した。Googleは、最近投入したAI製品の需要に対応するための短期契約だと説明している。
今後の事業戦略では、StarshipとAI関連分野が柱として位置付けられる。SpaceXは上場書類で、現在のStarlink中心の収益構造に加え、Starshipの再使用やxAI関連の事業機会を示した。ただ、Starshipの再使用実現への道筋はなお不透明で、大規模な損失構造が短期間で解消するかは見通せない。
また、上場書類では将来的な希薄化の可能性にも言及した。追加の資金調達や持ち株構成の変化に伴い、既存株主の持ち分が薄まる可能性を残した形だ。
Teslaとの合併可能性を巡る思惑もくすぶる。SpaceXの最高執行責任者(COO)であるグウィン・ショットウェル氏は12日、CNBCのインタビューで関連する質問を受け、「SpaceXとTeslaの合併は、マスク氏の人生をもう少し豊かにできる」と語った。これを受け、市場では両社統合を巡る観測が再燃した。
SpaceXの上場は、単に史上最大のIPOという記録にとどまらない。好調な株価の出足、マスク氏の圧倒的な支配力、Starlink依存の収益構造、AI向け大型契約、希薄化リスク、Teslaとの統合観測が、今後の株価と企業価値を左右する主要な変数となる。