米上院で審議中の暗号資産市場構造法案「CLARITY法案」を巡り、超党派協議が再調整を迫られている。最大の争点だったトランプ氏関連の倫理条項を巡る暫定合意が崩れ、ホワイトハウスが目指す7月4日までの成立日程にも影響する可能性が出てきた。
ブロックチェーン関連メディアのCoinPostが13日付で報じたところによると、本会議採決を前にした11日の協議で、共和党とホワイトハウス側が既存の暫定合意案の中核部分を撤回した。これにより、法案を巡る調整は事実上やり直しとなった。
協議には、民主党のカーステン・ギリブランド、ルーベン・ガジェゴ両上院議員、共和党のバーニー・モレノ、シンシア・ルミス両上院議員のほか、ホワイトハウス暗号資産委員会のパトリック・ウィット事務局長が参加した。会合は、上院銀行委員会での審議に先立ってまとめられていた暫定案を、関係者が初めて一堂に会して確認する場だったという。
焦点となっているのは、ドナルド・トランプ大統領の暗号資産事業に関わる利害と結び付いた倫理規定を、だれがどのように執行するかだ。従来の暫定案には、司法省が関連規定を執行しない場合、各州の司法長官が連邦司法省を相手取って提訴できる内容が盛り込まれていた。
ただ、協議の過程では、この仕組みが政治的攻撃の手段として利用されかねないとの懸念が浮上した。共和党とホワイトハウスは当該条項を撤回し、代替案として、執行権限を連邦司法長官に限定する案や、弾劾手続きによる対応を示した。
これに対し民主党側は、いったんまとまった合意が反故にされたとして強く反発している。交渉に関わった関係者の間でも、協議は難航しているとの見方が出ている。
もっとも、法的な論点も残る。一部の法学者は、州政府が連邦政府の違憲行為を問題として提訴すること自体は可能だとしつつ、州司法長官が連邦司法省の執行を強制するような構造は、憲法上の整理が難しいと指摘している。
倫理条項以外でも、法案成立の障害となり得る要素がある。米国保安官協会、米国警察友愛会、米国地方検事協会などの関係団体は、法案の一部が暗号資産を使ったマネーロンダリングの捜査や起訴を難しくするおそれがあると主張している。
論争の中心にあるのが、法案604条の「Blockchain Regulatory Certainty Act」条項だ。第三者の違法行為を意図していない非カストディアル型ソフトウェア開発者について、法的責任を負わないことを明確にする内容となっている。
捜査機関側は、これにより犯罪者の追跡が難しくなると懸念する。一方、政府側は、あくまで開発者保護のための規定であり、マネーロンダリング対策や制裁執行の能力を損なうものではないと説明している。
民主党のマーク・ワーナー、キャサリン・コルテス・マスト両上院議員も、捜査機関の懸念が十分に解消されない限り、法案支持は難しいとの立場を示している。
日程面でも余裕は乏しい。上院の会期は夏季休会まで1カ月余りしか残っておらず、ワシントン政界ではこれが事実上の処理期限と受け止められている。
それでもホワイトハウスは、7月4日までに法案を成立させる目標を維持している。パトリック・ウィット事務局長は最近のインタビューで、倫理条項、農業委員会の管轄問題、捜査機関の懸念といった主要論点について、日々前進があると強調した。
もっとも、上院が法案を可決しても手続きは終わらない。下院はすでに別の市場構造法案を可決しており、今後は両院で文言調整が必要になる。関係者の間では、倫理条項を巡る再調整の行方が、CLARITY法案の処理速度を左右する最大の変数になるとの見方が出ている。