カナダ通信大手Bellが、FIFAワールドカップ開催期間中のモバイル通信の急増に備え、トロントとバンクーバーの会場周辺でネットワーク増強を進めている。
Bloombergが6月12日(現地時間)に報じたところによると、Bellは両都市の大会会場周辺に移動式基地局を計4台追加配備した。トロントのスタジアムでは新たに数十基のアンテナも設置した。投資額は総額2500万ドルに上る。
移動式基地局はスタジアム周辺やファンフェスティバルエリアに配置し、場内ではスタジアム上部に設置したアンテナでトラフィックを分散する。場内外で同時多発的に発生する大容量通信に対応する構えだ。
とりわけトロントのスタジアムでは、ワールドカップ開催に合わせた仮設席の増設により、1試合当たりの収容人数が4万5000人を超える見通しだ。Toronto FCやArgonautsの試合を大きく上回る観客が一度に集中するため、通信負荷の増大が見込まれている。
Bellは今回の増強により、トロント会場のセルラーネットワーク容量が大会期間中に約3倍へ拡大するとみている。理論上の最大ダウンロード速度は4.3Gbpsに達する見込みだ。
Bellのシニア技術プロダクトマネジャー、アヤ・アブガネム氏は「ファンが通信障害なく携帯電話を使えるよう準備を整えた」と説明した上で、「観客からネットワークへの不満が出なければ成功だ」と述べた。
現地でのテストでも改善は確認された。Bellの無線周波数エンジニアリング担当、ガス・モンテイロ氏は、トロント会場南側スタンドでの試験で、ダウンロード速度が従来比で約2.5倍、アップロード速度は最大4倍に向上したと明らかにした。
同氏は、移動式基地局の最大の利点として、場外のトラフィックを吸収し、場内ネットワークの負荷を軽減できる点を挙げた。観客が密集するスタジアム内部の混雑緩和に効果的だとしている。
一方、エリアによって改善の度合いには差もある。北側スタンドは構造や景観上の制約から、アンテナを中央部ではなくコーナー付近にしか設置できず、なお改善の余地が残るという。
今回の増強の恩恵を受けるのはBellの契約者だけではない。Bellとネットワーク共有契約を結ぶTELUSの契約者も、拡充された通信容量と速度を利用できる。競合のRogersも別途、トロントとバンクーバーの会場周辺に移動式通信タワーを設置し、ネットワーク拡充に2700万ドルを投じた。
カナダは今大会で計13試合を開催し、このうち7試合はバンクーバーのBCプレイスで行われる。スタジアムに加え、ファンが集まる拠点や移動経路まで安定した通信品質を確保できるかが重要な課題となっている。
Bellは大会期間中、ネットワーク運用要員を24時間体制で常駐させ、リアルタイム監視を行う。さらに、AIベースの分析ツールで混雑エリアを即時に把握し、必要に応じてネットワーク設定を直ちに調整する計画だ。
業界では、大型スポーツイベントにおける通信品質は単なる利便性を超え、競争力を左右する基盤になっているとの見方が出ている。試合中の決定的な場面で数万人の観客が同時に写真や動画を撮影し、ソーシャルメディアで共有するため、安定したモバイルネットワークの運用が観戦体験を大きく左右するためだ。