写真=InswaveのCTO、キム・ウクレ氏

Inswaveは、企業がコーディングAIを安全に活用できる開発・検証基盤として「エンタープライズSDD(Spec-Driven Development、仕様主導開発)」を打ち出した。あわせて、AIエージェント時代を見据えたUI要素技術や、利用状況に応じてUIをリアルタイムに生成する構想も示し、AIを軸に事業戦略の再編を進めている。

現在では、利用主体を人ではなくAIエージェントとする「ヘッドレス(Headless)」型のソフトウェアプラットフォームを投入する企業が相次いでいる。ヘッドレスソフトウェアは人が直接操作しないため、従来型のUIを持たないのが特徴だ。この流れを受け、一部では「UIの死」といった見方も出ている。

ただ、現時点でそうした見方は早計だという声もある。AIエージェントが普及しても、人がソフトウェアを使う場面がなくなるわけではなく、人向けソフトウェアには引き続き人のためのUIが必要になるというのが現実的な見方だ。

InswaveのCTO、キム・ウクレ氏は、UIはなくならないものの、その姿は大きく変わるとみる。AIの浸透によって、人が使うソフトウェアのUIにも大きな変化が及ぶというのが同氏の見立てだ。

同氏によれば、エンタープライズUIの進化はAI登場以前から続いてきた。ChatGPTに代表される生成AIが広がる前から、同分野は単なる画面開発の支援にとどまらず、業務価値を高めるソリューション提供へと領域を広げてきた。AIによる変化も、その延長線上にあるという。

一方で、変化の大きさという点ではAIのインパクトはこれまでとは比較にならず、業界としてより積極的な対応が必要だとキム氏は強調する。InswaveもAIを軸に、戦略と実行の両面で再編を加速している。

同社の取り組みは大きく3つに整理できる。第1は、エンタープライズ環境でAIを活用した開発を、より容易かつ安全に進めるためのプラットフォーム提供だ。

Inswaveはこれまで、企業の社内システム向けUI開発を支援するプラットフォームを基盤に事業を拡大してきた。そのため、コーディングAIが企業の開発現場に急速に広がる流れは、同社にとって重要かつ慎重な判断を要するテーマでもある。独自のコーディングAIを開発して対抗する選択肢もあるが、資本力のある有力企業が競合する市場環境を踏まえると、単独で勝負するのは容易ではないと判断した。

そこで同社が打ち出したのが、得意分野と市場の現実の双方を踏まえた「エンタープライズSDD」だ。企業が複数のコーディングAIを安全に利用できる環境の整備に主眼を置く。

キム氏は「エンタープライズ環境では、コードを本番環境にデプロイする際、人が検証し、責任を持てる体制を整えることが重要だ」と説明する。エンタープライズSDDでは、Inswaveの自社コーディングツールに加え、CursorやAmazon Qなど外部ツールも活用できるという。「コーディングAIが生成したコードについて、本番投入の可否を確認できるツールとフレームワークが中核になる」と述べた。

エンタープライズSDDでは、生成AIに投入する仕様書の作成を容易にする機能にも注力する。キム氏は「まだ立ち上がったばかりの領域で、主要プレーヤーは多くない。十分に勝負できる市場だ」とした上で、「複数の顧客と概念実証(PoC)を進めており、6月に正式リリースする」と明らかにした。

同氏によると、InswaveのエンタープライズSDDプラットフォームは、従来のUI開発専用ツールというより、汎用的なアプリケーション開発ツールに近い位置付けになる。エンタープライズ市場でUI領域を超えて事業基盤を広げる足掛かりになるかが注目される。

第2のテーマは、AIエージェントにも対応できるUIだ。キム氏は「AIエージェントが何をしているのかを人が確認できるUIが必要になる。そのためには既存のUIもAIフレンドリーな形に変わる必要がある」と話す。Inswaveは関連する要素技術を提供し、顧客がそれを使ってUIを構築する形を想定しているという。

第3は、構想段階にあるリアルタイムUIだ。ユーザーの状況に応じて、必要なUIをその場でリアルタイムに生成するシナリオを想定する。

Inswaveは最近開催したソリューションセミナーで、この構想に関するデモを披露した。何も表示されていない画面から顧客情報を照会すると、AIがガバナンスや監査のプロセスを踏まえた上で、料金プランの提案などに必要な新たなUIをリアルタイムに生成する内容だ。

キム氏は「UIがこの方向へ進化していくのであれば、リアルタイムUIを実装できるプラットフォームを、検証可能で説明可能な構造として支援していく」と述べた。

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