移動距離の拡大は所得増より移動速度の上昇に左右されるとの見方が示された。写真=Shutterstock

人の移動距離を押し広げる最大の要因は、所得の増加や自動車嗜好の変化ではなく、交通手段の速度向上にある――。こうした見方を、CleanTechnicaが紹介したArie Bleijenberg氏(T&E会長)の寄稿が示した。移動時間がほぼ一定に保たれる以上、速度が上がれば行動範囲は広がり、道路を増やしても渋滞緩和の効果は長続きしにくいという。

Bleijenberg氏は寄稿の中で、移動需要の増加を左右する主要な変数として移動速度を挙げた。

根拠として示したのが、1日当たりの移動時間の安定性だ。同氏は、都市や国家をまたいで見ても、1人当たりの1日の平均移動時間は約1.1時間で比較的一定だと説明する。移動に費やす時間が大きく変わらなければ、速度の上昇に応じて移動距離は長くなるという考え方だ。

例として挙げたのが、1981年に開通したフランスのパリ〜リヨン間の高速鉄道だ。所要時間の短縮により、両都市をまたぐ通勤が現実的になったという。第2次世界大戦後に自動車の普及が進むと、職場や学校、商店など日常の目的地までの距離も拡大した。寄稿では、オランダの1人当たりの1日移動距離が1960年の約10kmから、その後約30kmまで伸びたと紹介している。

一方で同氏は、道路を増やす手法には限界があると指摘する。新たな道路が開通すると渋滞は一時的に和らぐものの、走行条件の改善で交通量が増え、数年以内に再び混雑が深まる可能性があるためだ。

逆に、自動車の平均速度の上昇が頭打ちになれば、移動距離の増加傾向も鈍るとした。オランダでは2005〜2019年に、1人当たりの自動車移動距離が3%減少した。英国やスペインでも同様の傾向が確認されたという。

代替策として同氏が示したのは、住宅、雇用、商業施設、公園などが近接して集積する高密度の都市構造だ。大都市では自動車の速度が全国平均を下回る一方、目的地が集積しているため、長距離移動そのものの必要性が小さい。自動車依存を抑えながら、生活の利便性を高められるとの見方を示した。

その上で同氏は、移動速度と都市構造を十分に織り込まなければ、交通量の予測を過大に見積もるおそれがあると指摘した。道路拡張に偏った政策は見直す必要があると強調している。

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