KDDIは、郵便局やローソン店舗をドローンの運用拠点として活用し、物流や防災分野での全国展開を目指す構想を明らかにした。常設型ドローンポートの整備に加え、SpaceXの衛星通信サービス「Starlink」との直接通信も活用し、遠隔運航の基盤を広げる。
ITmediaが10月29日付で報じた。構想を公表したKDDI SmartDroneはKDDIの子会社で、4G LTEや衛星通信を活用したドローンソリューション、自律飛行プラットフォームを手掛ける。
今回の狙いは、機体の普及に先立って常設運用の基盤を整えることにある。各地域にドローンを常駐させ、離着陸や充電ができる「ドローンポート」を増やし、将来的には企業や自治体が共同利用できる社会インフラとして整備する考えだ。候補地には郵便局の屋上やローソン店舗の敷地を挙げた。
この取り組みは、KDDIが掲げる「AI労働力構想」とも重なる。ヒロノ・マサフミ社長は、ドローン事業について「最も分かりやすい形で具現化している」と説明した。物流や監視、点検といった業務を人に代わってドローンが担う体制を、全国に広げる狙いがある。
通信網の整備も並行して進める。KDDIは2026年5月、Starlinkとドローンの直接通信による飛行実証に成功した。通信圏外でも遠隔運航が可能であることを確認しており、2027年中のサービス開始を目標に据える。
ドローンポートの整備も進んでいる。KDDI SmartDroneは現在、全国33拠点にドローンポートを設置している。2026年6月には、大阪府池田市のローソン店舗敷地内に、ローソン店舗として初の常設ドローンポートを設けた。同月には日本郵政と基本合意書を締結し、全国約2万4000局の郵便局ネットワークを活用する方針も示している。
日本郵政との連携では、ドローン物流にとどまらず、活用領域の拡大も視野に入れる。KDDIは郵便局の屋上などをドローンポート用地として活用し、日本郵政はKDDIの通信技術と遠隔運航のノウハウを生かして、ドローン物流の拡大を進める方針だ。山間部では最短距離での配送が可能になり、Starlinkを使えば通信圏外でも遠隔運航できるとしている。
両社は9月、石川県の珠洲郵便局の屋上と近隣の消防署にドローンポートを設置し、複数機を同時に遠隔運航する実証を行った。ヒロノ社長は、当初は郵便局へのドローンポート設置が地域社会にどう役立つのか疑問もあったとした上で、現場での協議を通じて「郵便物流だけでなく、災害時の道路状況の確認にも使える」と理解したと語った。
災害対応では放送局も加わる。TV朝日は、ドローンを常時配備することで、災害現場の取材スピードを大きく高められるとみている。TV朝日ニュースセンター長は、従来のヘリコプター取材では現場到着まで約1時間かかっていたのに対し、現地にドローンが常時あれば「約10分で状況を把握できる」と述べた。
TV朝日、KDDI、KDDI SmartDroneは10月7日、能登半島で大地震を想定した実証も実施した。地震発生から約15分後にドローンを離陸させ、東京の運用担当者2人が4機を同時に遠隔運航した。撮影映像はIP回線を通じてTV朝日本社にリアルタイム伝送し、放送設備との連携も確認した。
同センター長は、SNSで橋の流失に関する通報が入った場合でも、ドローンを使えば現場の状況を即時に確認でき、自治体や消防が救助の優先順位を判断する際にも活用できると説明した。
一方、全国展開に向けてはコスト面の課題が残る。日本郵政の執行役員は、機体の開発費や運用費に加え、飛行経路を事前に設定する作業にも時間と費用がかかると指摘した。
もっとも、1便当たりの飛行コストは低下しているという。航路を定期路線として運用し、飛行回数を増やすことに加え、1人が複数機を遠隔運航できる体制を整えれば、さらなる省人化も可能になるとの見方を示した。
KDDIは、ローソン店舗と郵便局を通じてドローンポートの設置場所を確保し、Starlinkで通信エリアを広げることで、全国展開の基盤整備を進めている。今後は、複数機の同時運用や遠隔運航の体制を、事業として成り立たせられるかが普及のカギとなりそうだ。