写真=Runware

AIデータセンターを工場で量産し、現地で短期間に立ち上げる動きが広がっている。AIインフラ企業のRunwareは、モジュール型AIデータセンター「Sonic Pod」を量産し、2028年までに日産30メガワット(MW)の生産体制を構築する方針を打ち出した。電力・通信インフラが整った用地であれば、搬入後48時間以内の稼働を見込む。

Cryptopolitanによると、Runwareはデータセンター建設を現場中心から工場中心へ切り替えるモデルを推進している。設備をあらかじめ工場で組み立て、試験まで済ませたうえで現地へ輸送する方式で、建設期間の短縮とコスト圧縮を狙う。

中核となるのが、モジュール型AIデータセンターのSonic Podだ。現地で機器を一つずつ組み上げる従来型と異なり、完成品を搬入して据え付けることで、導入スピードを高める。

Sonic Podは20フィートのモジュールで、約1200基のGPUを収容できる。1基当たりの容量は1MW。冷却には、外部の継続的な水道接続を必要としない密閉型の液冷方式を採用する。

Runwareは現在、ルーマニアでSonic Podを組み立てており、2027年初めに第2工場を開設する計画だ。現時点では1基の生産に約3週間を要するが、組み立てラインの整備が進めば、これを1日まで短縮できるとしている。

フラビウ・ラドゥレスクCEOは、生産体制が整えば日産ベースでの量産が可能になるとの見方を示している。ただし、同社が示す48時間はデータセンター建設全体の期間ではない。電力・通信インフラが整った用地に完成済みモジュールを設置し、立ち上げるまでの工程を指す。敷地造成や送電網接続に要する時間は含まれない。

需要面でも先行確保を進める。Runwareは、10億ドル規模のコミットメントを伴う関心表明を獲得しており、20MW超のデータセンター容量に相当すると明らかにした。もっとも、こうした引き合いが実際の契約や売上高に結び付いたわけではない。同社は2027年末に量産を始める見通しとしている。

AIデータセンターの短期構築を巡る競争は他社にも広がる。NVIDIAは10月21日、次世代のベラ・ルビンシステム向け基準設計「DSX POD」を公開した。出荷前に機器を組み立てて試験し、顧客先へ納入する方式で、電力などのインフラが整った環境では、従来約6カ月かかっていた設置期間を2週間に短縮できるとしている。

Crusoeもモジュール型データセンター事業を拡大している。コロラド州で約35万2000平方フィートの工場を運営し、Crusoe Cloudと接続した「Spark」プラットフォームを通じてAIインフラを提供する。2020年からモジュール型設備を運用しており、実際にAI演算が可能な容量を最短3カ月で供給できるとしている。

もっとも、各社で構築期間の定義は異なり、単純比較はできない。Runwareの48時間は完成済みモジュールの据え付けと立ち上げ、NVIDIAの14日はシステム配置期間、Crusoeの3カ月は実運用可能な計算容量を確保するまでの期間を指す。

Runwareの事業モデルも特徴の一つだ。同社はデータセンターの賃貸ではなく、AI推論サービスの提供を主軸とする。顧客が自社GPUを持ち込むことも可能だが、ネットワーク分野ではNVIDIAの技術に依存している。AI学習向けに加え、今後拡大が見込まれる推論需要を取り込む戦略とみられる。

市場見通しは強気だ。Grand View Researchは、世界のモジュール型データセンター市場が2024年の約290億ドルから、2030年には758億ドルへ拡大すると予測する。不動産・インフラコンサルティングのJLLは、世界のデータセンター容量が2030年に200ギガワット(GW)へ達する可能性があり、そのために約3兆ドルの投資が必要になると試算した。JLLは、2027年以降はAI学習よりも推論需要の裾野が広がるとみている。

一方で、工場生産の拡大だけでデータセンター業界の制約が解消するわけではない。依然として電力確保と用地調達が大きな課題として残るためだ。JLLによると、主要市場では送電網接続の待機期間が4年を超える。国際エネルギー機関(IEA)は、世界のデータセンター電力消費量が2030年に950テラワット時(TWh)に達すると予測している。

地域社会の反発も無視できない。Pew Researchの調査では、米国人の54%がデータセンターは環境に悪影響を与えると答えた。テキサス州は8月、審査中プロジェクトに対する送電網承認を一時停止し、9月には環境許可手続きも中断した。

量産体制そのものの実現性も問われる。電気自動車スタートアップのArrivalは、工場中心の量産モデルを収益性のある形で確立するのに苦戦した。Runwareについても、組み立てラインで生産速度と規模を同時に確保できるかが焦点になる。

Runwareにとっての課題は、データセンターを速く組み立てることだけではない。需要の裏付けを確保しつつ、増産を支える電力と周辺インフラを押さえられるかが成否を左右する。工場でデータセンターを量産するモデルが業界の新たな標準として定着するかどうかは、そこにかかっている。

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