拒食症と過食症の有病者数が、1990年から2023年までの33年間で、世界全体で71%増えたことが分かった。肥満治療に広く使われるGLP-1系減量薬については、一部の摂食障害患者で症状を悪化させる恐れがあるとして、専門家が注意を呼びかけている。
MIT Technology Reviewが10月30日に報じたところによると、中国・南京医科大学付属小児病院のルハイ・バイ氏率いる研究チームは、204の国・地域のデータを分析した。その結果、拒食症と過食症の世界の有病者数は1990年から2023年にかけて71%増加した。
研究は10月28日付で国際学術誌「JAMA Psychiatry」に掲載された。2023年時点の有病者数は約1810万人と推計され、このうち41.2%を10〜24歳が占めた。健康損失を示す障害調整生存年(DALY)は383万年に上った。
研究チームは、この傾向が続けば2050年の有病者数は2180万人に達すると見込む。一方で、今回の分析には過食性障害など、他のタイプの摂食障害は含まれていない。
有病者数の増加には人口増加の影響もあるが、年齢構成を補正した有病率もこの33年間で20.6%上昇した。
専門家は、SNSで広がる「痩せた体」への圧力や、新型コロナウイルス禍での社会的孤立などを潜在的なリスク要因に挙げる。ノースカロライナ大学のシンシア・ブリック教授は、SNS上の外見比較の文化やダイエット流行が摂食障害を誘発し得ると警告した。
GLP-1系減量薬の普及も、新たな懸念材料として浮上している。ギャラップの調査では、米国の成人の15%が、減量目的でGLP-1系薬剤を使ったことがあると答えた。
ルイビル大学のシェリ・レヴィンソン教授の研究チームが実施した小規模調査では、摂食障害患者の30%にGLP-1系減量薬の使用経験があり、約10%は不適切使用や乱用に該当した。レヴィンソン氏は、実臨床でも薬剤の不適切使用や乱用、重い摂食障害症状を示す患者を確認していると説明した。
もっとも、GLP-1系減量薬が摂食障害増加の直接原因だと示されたわけではない。一部では、過食症状を和らげる可能性についての研究も進んでいる。
最近公表された専門家提言では、GLP-1系減量薬の処方前に摂食障害の既往を確認し、治療中は症状の変化を継続的に観察するよう求めた。とくに活動性の拒食症患者など高リスク群では、慎重な処方判断が必要だと強調している。