Coinbaseで取引されるビットコイン価格の対Binanceディスカウントが年初来最大に広がった。通常であれば米国投資家の売り圧力を示唆する動きだが、今回はBinanceの入出金停止に伴って裁定取引が機能しにくくなり、価格差が拡大した可能性がある。
ブロックチェーンメディアのU.Todayが1日付で報じたところによると、Coinbaseプレミアム指数は約-0.06%まで低下した。Coinbaseのビットコイン価格がBinanceを下回ったことになる。
一般に、Coinbaseプレミアム指数の急低下は、米国の大口資金による暗号資産売りのシグナルと受け止められる。米国市場の比重が大きいCoinbaseで相対的に売り圧力が強まったことを示すためだ。
ただ、今回は事情が異なる。価格差が広がった時期は、Binanceのハッキング直後と重なった。10月29〜30日にハッカーがBinanceのホットウォレットを攻撃し、63億ドル規模の資金が流出したとされる。Binanceは盗難資金の約半分を速やかに凍結し、残る損失についてもSAFU準備金で全額補填すると表明した。
その後、Binanceは対応の一環として入出金を一時停止した。この影響で、取引所間の価格差を埋める裁定取引は実質的に停止状態となった。通常であれば、大口投資家がCoinbaseで割安なビットコインを買ってBinanceへ移し、価格差を縮小させることができる。だが、資金移動が止まったことで調整機能が働かなかった。
この結果、流動性は取引所ごとに分断され、Coinbaseのディスカウント幅は実際の需給以上に拡大したとみられる。
Galaxy Researchでリサーチ部門を統括するアレックス・ソン氏は、取引停止の影響で、Coinbaseのディスカウント幅は当面、米国需要の弱さを示す指標として機能しなかったと指摘した。今回の指数低下は、市場心理だけでは説明しにくいという見方だ。
市場の動揺は価格にも波及した。ビットコインは不安心理の広がりを受け、7万7000〜7万8000ドルまで下落した。ただ、この下げはCoinbaseプレミアム指数の低下そのものというより、ハッキングと取引制限が同時に市場不安を強めた結果とみられる。
今後の焦点は、裁定取引の担い手が数日以内に価格差をどこまで縮小できるかに移る。Binanceの出金再開後、CoinbaseとBinanceの価格乖離が速やかに縮小すれば、今回の年初来最大の逆ザヤは取引制限に伴う一時的なゆがみとみる見方が強まりそうだ。
一方で、マイナススプレッドが定着すれば見方は変わる。その場合は、米国資金の実需鈍化が遅れて表面化したシグナルと受け止められる可能性がある。今回のCoinbaseディスカウント拡大は、ハッキング後に取引所インフラが止まると、市場シグナルがいかに容易にゆがむかを示した格好だ。