写真=ダニエル・コナム氏のXアカウントより

企業がAIパイロットを重ねても事業成果につながらないのは、データやモデルの問題ではなく、業務設計や運用体制に原因がある――。AIエージェント企業Varickで導入支援を担うFDE部門を率いるダニエル・コナム氏はX(旧Twitter)への投稿で、こうした見方を示した。

Varickは、売上高10億ドル超の大企業を対象に、AI戦略の策定から業務再設計、エージェントの構築・運用までを支援している。コナム氏は、AIパイロットが成果を生まない要因として7つを挙げ、モデル選定はその中心的な問題ではないとした。

第1の問題として挙げたのは、実際の業務フローを可視化したプロセスマップがないまま、標準運用手順(SOP)だけを基に対象範囲を決めてしまうことだ。

例として、新規取引先を社内システムに登録する業務を示した。マニュアル上は5日で完了する想定だが、実際には22日かかるという。

コナム氏は「書類に不備があるまま届くこともあれば、口座情報の書式も統一されていない。10件に1件は、既に登録済みの企業が名称を少し変えて再申請してくる。こうした例外が全体の40%を超える。マニュアルだけを基に作ったAIが現場で通用しない理由だ」と説明した。

第2の問題は、業務全体ではなく、AIデモで見栄えのする工程だけを切り出して短期間で作ってしまうことだ。AIで納税書類(W-9)の読み取り時間を8分短縮できても、業務全体の処理日数は変わらない。

コナム氏は「22日の大半は実作業ではなく、処理順の都合や、他社・他部門の確認待ちに費やされている」と述べた。

第3は、基準値(ベースライン)を設定していないことだ。導入前の処理期間や案件当たりのコスト、エラー率を把握していなければ、4カ月後に財務部門から投資収益率(ROI)を問われても説明できない。

同氏は「ユーザーが30%生産的になったと感じる、といったアンケート結果に財務部門は関心を持たない」と指摘した。

第4は、従業員が自ら呼び出さなければ使われないチャットボットやコパイロットのような支援ツールを作ることだ。こうしたツールの利用者は従業員全体の約10%にとどまり、効率改善も10~20%程度だとしている。

これに対し、同氏は「指示がなくても自律的に動き、例外対応だけを人に引き渡すバックグラウンドエージェントであれば、60~90%の改善が見込める」と述べた。

第5は、従業員が日常的に使うシステムの外側に別アプリを作ることだ。

同氏は「新しいURLにアクセスし、ログインから始めなければならないツールは使われない。エージェントはSAP、ServiceNow、Outlookのように、既に使われているシステムの中で動くべきだ。社内クラウドとデータ基盤上で稼働すれば、セキュリティー、法務、IT部門の承認も得やすくなる」と主張した。

第6は、現場側に責任者がいないことだ。IT部門が構築して引き渡したエージェントは、問題が生じても手直しする主体が不在になりやすいという。

コナム氏は「対象業務の成果責任を負う部門長がエージェントを所管し、問題発生時にすぐ修正できる技術人材をそばに置くべきだ」とした。

第7は、7カ月目以降の運用計画がないことだ。パイロットは通常、6カ月分のイノベーション予算で始まるが、その後の費用負担が曖昧になりやすい。

予算が尽きた後、AIの利用料を誰が負担するのか、モデルの提供が終了した場合や価格が上昇した場合にどう対応するのかといった論点に、答えを用意していないケースが多いという。

同氏は「最初から当該部門の運用予算で賄える形にし、特定のAIモデルに縛られない構成にすべきだ」と述べた。

コナム氏はまた、AIプロジェクトで失敗が繰り返される背景として、関係者の利害も挙げた。ソフトウェア企業はユーザー数の拡大、コンサルティング企業は報告書作成、社内チームは早期の見栄えづくりを優先しがちで、実際の成果への関心が薄れやすいという。

その上で同氏は「この7点をすべて解消した結果、協力会社の登録期間は22日から4~5日に短縮され、人の判断が必要な案件も15%前後に収まった。基準値を設定していたからこそ、CFOも成果を確認できた。それが次の10業務への展開に必要な予算確保につながる」と強調した。

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