Metaが8日(現地時間)に公開した個人向け人工知能(AI)エージェント「Muse」が、米テック業界で大きな注目を集めている。ダウンロード数は公開後に340万件を超え、米App StoreではChatGPTを上回って首位に立った。一方で、中長期的な普及に向けては、利用者の信頼確保や提携先の拡大、収益化の実現が課題として浮上している。
Museを巡っては、「Moment」と「Muse」を掛け合わせた見出しが相次ぎ、個人向けAIエージェントがテック業界にもたらす変化を展望する論調も広がっている。
初動の勢いを示す数字も出ている。Museアプリのダウンロード数は公開後340万件を突破した。首位の維持がどこまで続くかは不透明だが、Appleの米国App StoreではChatGPTを上回り、1位となった。
Metaが最近開いた年次カンファレンス「Connect 2026」でも、Museは主要テーマの1つだった。マーク・ザッカーバーグCEOは、近い将来、人々がAIエージェントとリアルタイムで会話し、Metaのスマートグラスや近く投入する携帯端末「Muse Charm」を通じて常時接続するようになるとの見通しを示し、AIエージェントが日常生活に深く入り込む未来像を繰り返し訴えた。
株式市場でも追い風となっている。24日時点でMeta株は年初来で18%上昇した。Muse公開後の上昇率は27%に達し、Amazon、Alphabet、Microsoftなど他のビッグテックを上回った。AI投資の拡大を嫌気してウォール街で慎重視されてきたMetaにとって、大きな反転材料になったとThe Informationは報じた。
もっとも、この勢いを維持できるかは別問題だ。Museには、普及と事業化の両面で乗り越えるべきハードルが少なくないとの見方が出ている。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、Metaにとって最大の論点の1つは、利用者がメールや銀行口座などのオンラインアカウントへのアクセス権限をMuseに委ねるだけの信頼を得られるかどうかだ。金融会社Oppenheimer&Coの調査では、「任せても問題ない」と答えた人は8%にとどまった。
Museが利用者に代わって商品をオンライン購入できるようにするには、対応するWebサイトや小売事業者との提携拡大も欠かせない。AmazonがMuseによるアクセスを遮断する方針を示す一方、Walmart、Sephora、Best BuyはMetaと連携する道を選んだ。
競合各社の動向も無視できない。OpenAIは今年初め、AIのパワーユーザーの間で人気を集めたオープンソースのAIエージェントツール「OpenClo」の開発者を採用し、次世代の個人向けエージェント開発を任せた。OpenAIは29日に開発者イベントを予定しており、Museに対抗する発表があるか注目される。
さらに、利用者数の拡大ではなく収益化の局面に入ると、Museのハードルは一段と高くなる可能性がある。
Museは利用上限付きで無料提供されている。Rosenblatt Securitiesはリポートで、Museが収益を上げるには、計算コストが「大幅に低下」するか、利用者がMuse経由で毎月平均1000ドル(約15万円)超の商品を購入する必要があると分析した。MetaはMuse経由の取引で手数料を得るが、月1000ドルという水準は、現在のEC市場の平均やAmazonでの平均支出を大きく上回るとThe Informationは伝えている。
TechCrunchのショーン・オケイン記者は、Museの利用体験そのものにも限界があると指摘した。未請求資金を見つけ、実際に受け取れた事例がある一方、こうした機能は継続利用につながりにくいという。サブスクリプションの解約や二重課金の確認といった機能についても、クレジットカード情報やGmailアカウントをMetaに預けられるのかという信頼の問題と切り離せないとした。