【マウイ(米ハワイ州)=ソク・デゴン】Qualcommは22日(現地時間)、米ハワイ州マウイで開催した「Snapdragon Summit 2026」の基調講演で、買収したModularを中核に、異なるハードウェア上でAIを開発・最適化できる統合ソフトウェア環境の構築を進めていると明らかにした。デバイスやコンピューティング環境の多様化が進む中、開発者がアクセラレーターやアーキテクチャごとに個別対応を迫られている現状を改め、負担の軽減を図る。
Qualcommが課題として示したのは、異種コンピューティング環境における最適化の複雑さだ。現在のAIワークロードは、さまざまなアクセラレーターやハードウェアアーキテクチャ、プラットフォーム上で動作している。このため、複数の機器で一貫したAI体験を実現するには、開発者が環境ごとに個別の最適化を行う必要があるという。
こうした事情は、Snapdragonの内部構成にも当てはまる。Qualcommは今回のサミットで発表した次世代モバイルプラットフォームに「Adreno Matrix Core」を導入し、従来のNPUとCPUに加えてGPUにもマトリクス演算の加速機能を広げた。単一プラットフォーム内でも、どの演算エンジンにワークロードを割り当てるかを制御するソフトウェアの重要性が増している。
この課題に対応するため、QualcommはModularを通じて、異種コンピューティング環境全般でAIを開発・最適化できる統合ソフトウェア環境を提供する方針だ。Qualcommによれば、Modularは異なるコンピューティング環境間でAIワークロードの移植や実行を支える、オープンなソフトウェアレイヤーを担う。
狙いは、開発者がハードウェアごとに同じ作業を繰り返さずに済むようにし、単一のソフトウェア環境からAIを展開できるようにすることにある。
Modularが対応するハードウェアは、Qualcomm製品に限らない。Qualcommは、Modularのプラットフォームについて、複数企業のCPUやGPU、NPU、カスタムシリコンをサポートするハードウェア非依存の基盤を目指すと説明した。単一のハードウェア、ソフトウェア、クラウド事業者に縛られない異種コンピューティング環境の実現を視野に入れる。
同社は、クラウドやデータセンター、エッジ、デバイスをまたいでAIハードウェアや接続性、デプロイ能力を備えている点も強調した。半導体ベンダーであるQualcommが、競合を含む幅広いハードウェアを支えるソフトウェア基盤を確保したことは、AIソフトウェア層での事業基盤を広げる動きとみられる。
アモンCEOは「ModularのMojoとMAXをオープンソースとして公開し、Snapdragonだけでなく多様なハードウェアアーキテクチャ上でAIワークロードを実行できるよう支援する」と述べた。そのうえで、「長期的には、業界全体が利用できるオープンなAIソフトウェアプラットフォームの構築が目標だ」と語った。
◆Mojo・MAXをオープンソース化、業界横断のAI基盤を志向
Qualcommは、Modular買収をエッジAI事業の拡大にも結び付ける。QualcommのエッジAI技術とModularのオープンなソフトウェアプラットフォームを組み合わせることで、中央集約型インフラに偏りがちなAI投資の対象を、デバイスや自動車、ロボティクス、産業分野へ広げられるとしている。
また、国内外のコンピューティングインフラの活用度を高め、中央集約型AIから分散型かつ相互運用可能なAIインフラへの転換も後押しできるとした。Qualcommは、大規模フロンティアモデルに加え、国家LLMや業種特化型モデル、オープンウェイトモデルを複数のAIハードウェア上で運用できるよう支援すると発表した。
同社はこの構想を、韓国のソブリンAI戦略にも関連付けて説明した。Qualcommによると、オープン戦略を採ることで、政府や国内機関はデータやモデル、デジタルインフラに対する統制を維持したまま、必要に応じてインフラやクラウド、AIモデル、ハードウェアプラットフォームを選択できるようになるという。
その結果、国内の開発者や企業、研究機関は特定ベンダーに依存せず、自前のハードウェアやソフトウェアを開発・展開する基盤を持てるとする。Qualcommは、こうした取り組みが韓国の「AI G3」目標の支援につながり、国内で開発されたAIハードウェアとソフトウェアがグローバルなエコシステムに参加する機会を広げると付け加えた。