オーストラリア政府が今後40年の経済を左右する主要要因としてAIを挙げる一方、暗号資産やデジタル資産は長期経済見通しで取り上げなかった。これに対し業界側からは、AIエージェント時代を支える金融インフラの視点が欠けているとの指摘が出ている。
Cointelegraphが9月22日(現地時間)に報じたところによると、オーストラリア財務省が同日公表した最新の「世代間報告書」は、AIを将来の経済に大きな影響を及ぼす5つの構造変化の一つに位置付けた。
報告書は、エージェント型AIシステムについて、性能、自律性、活用範囲の面で大きく進展しており、一部指標では人間を上回る水準に達したと評価した。ほかの4要因としては、地政学的対立、高齢化、クリーンエネルギーへの移行、サービス中心への産業構造転換を挙げている。
一方、今回の報告書では暗号資産やデジタル資産への言及はなかった。過去の世代間報告書でも同分野は扱われてこなかったが、今年に入りオーストラリア準備銀行がトークン化金融や金融インフラの高度化を重視していることを踏まえると、今回の不在は一段と目立つ。
Digital Finance Cooperative Research Centre(DFRC)は、デジタル金融のイノベーションによって年間240億豪ドルの経済効果が生じる可能性があると試算している。
Coinbase Australiaを率いるジョン・オログレン氏は、政府報告書が生産性と技術導入の重要性を明確に示した点は評価しつつも、AIエージェントが利用する金融インフラへの視点が欠けていると指摘した。
同氏は「今後40年にわたるオーストラリアの繁栄は、新技術をどれだけ取り入れ、生産性を高められるかにかかっている」とした上で、「この報告書は、AIエージェントが必要とする金融インフラを完全に見落としている」と述べた。
こうした指摘は、AIと決済インフラの連携可能性を政府自身が別の文書で認識している点とも重なる。財務省が9月3日に公表した「金融イノベーション戦略」では、エージェント型システムが自動化取引やマシン間取引を拡大させ、リアルタイム性、相互運用性、プログラム可能性を備えた決済システムへの需要を押し上げる可能性があると明記した。
業界の関心は、AIそのものよりも、AIが実際に取引を実行するための基盤へと移りつつある。オログレン氏は、近年はデジタル資産プラットフォームの枠組みを通じて、必要な規制の明確化が進んだと評価した。
その上で、次の課題として、ステーブルコイン向けのトークン化された価値保存の仕組みと、トークン化市場に関する明確なルール整備を挙げた。
今回の報告書は、オーストラリア政府が長期の成長戦略でAIの比重を高める一方、デジタル資産を金融インフラの一部としてどう位置付けるかについては、なお別の政策文書で扱っていることを示した形だ。今後の政策論議では、AI競争力の強化と並行して、ステーブルコイン、トークン化市場、リアルタイム決済体制を一体のデジタル金融インフラとしてどう接続していくかが焦点になりそうだ。