ビットコイン初期に採掘された約110万BTCについて、サトシ・ナカモトの保有分とする見方が再び注目を集めている。ただ、現時点で示されている根拠は主に状況証拠で、本人の特定や、現在も秘密鍵が管理下にあるかどうかまでは確認されていない。
Cointelegraphが22日(現地時間)に報じたところによると、オンチェーン分析は初期に大規模な採掘主体が存在した可能性を強く示している。一方で、その主体がサトシ本人だったと断定できる証拠は見つかっていない。
議論が再燃したきっかけは、2026年9月5日に2010年3月に採掘された分の600BTCが16年ぶりに移動したことだ。この600BTCは4日間で生成された12ブロックの報酬に由来し、関連する秘密鍵が30分以内に順次使用された。ただ、この動きだけでサトシ関連のコインが動いたと結論づけるのは難しい。
暗号資産調査会社Bitqueryは、この12ブロックのうち10ブロックが、初期採掘の特徴として知られる「パトシ・パターン」と一致しないと分析した。残る2ブロックについても、一致の確度は低いと判断している。
Bitqueryのアナリスト、ガウラブ・アグラワル氏は、対象取引に現代的なウォレットソフトの痕跡が見られるとして、少なくとも秘密鍵がより新しい環境に移管された可能性があると指摘した。
同氏によれば、ブロックチェーンで確認できるのは、個人の身元ではなく、あくまで秘密鍵が管理されていた事実に限られる。秘密鍵は相続や売買、盗難のほか、中古ストレージから復旧される可能性もあり、オンチェーン記録だけでは「誰が保有していたのか」までは分からないという。
このため、長期間動いていなかったビットコインが移動したという事実だけでは、元の保有者を特定することはできない。
約110万BTCという推定は、研究者セルヒオ・デミアン・レルネル氏が2013年に示した分析に基づく。同氏は初期ブロック群に、他の採掘者とは異なる独特のパターンを見いだし、単一の採掘主体が約110万BTCを獲得した可能性が高いと推定した。
もっとも、レルネル氏自身もこの推定について、計算自体は正確だとしつつ、数学的な証明や直接証言を欠く状況証拠にとどまるとの留保を付けている。
Bitqueryは初期ブロック5万4316個を再分析し、このパターンを再構成した。公開されているパトシ・リストとの一致率は99.2%で、隣接ブロック5836組を対象にした時系列検証でも例外は確認されなかった。
ただ、推定総量は適用基準によって変動した。厳格に判定した場合は90万BTC未満となり、最も広く見積もった場合は約117万BTCだった。従来示されてきた100万〜113万BTCという推定値は、この範囲に収まる。
アグラワル氏は、「サトシが110万BTCを保有している」という通説は、3つの論点に分けて検討すべきだと説明する。まず、コインが単一の採掘主体によるものとみられる点には強い根拠がある一方、その主体がサトシだったとする部分は状況証拠にとどまるという。
さらに、コインが長期間動いていないという事実だけで、サトシが現在も当該秘密鍵を保有していると断定することはできないとした。
Bitqueryはまた、これまで公開研究で十分に扱われていなかった2010年5月17日の取引にも注目した。当時、初期採掘報酬に由来する600BTCが、約1時間おきに2回移動していた。
この動きは、2009年初めと同年末に採掘された報酬が、同一ウォレットに集約されていた可能性を示す事例として解釈されている。アグラワル氏は、統計的パターンの一致を超えて、複数ブロックの採掘報酬が相互に結び付いていることをオンチェーン記録で確認できる、最も明確な例だと評価した。
一方、2026年9月に移動した600BTCについては、パトシ採掘分には属さないとの分析結果が出ている。新たに確認されたオンチェーンデータでも、この資金をサトシ保有分と直接結び付ける根拠は見つからなかった。
初期ビットコインの大量保有分が単一の採掘主体に由来する可能性は高い。だが、その主体がサトシ・ナカモトであることを示す決定的な証拠は、なお確認されていないというのが現時点での結論だ。