【マウイ(米国)】Qualcommは、Agentic AIの普及に向け、クリエイターやファンコミュニティの育成を強化する。高性能チップの投入だけでは利用拡大につながらず、まずはユーザーに「自分のための技術」として受け入れてもらうための信頼醸成が欠かせないと判断した。
同社のドン・マグワイア最高マーケティング責任者(CMO)は9月22日(現地時間)、米ハワイ州マウイで開幕した「Snapdragon Summit 2026」の歓迎基調講演で、AI普及について「関心は第一歩にすぎず、行動変化を生むのは信頼だ」と述べた。
マグワイアCMOは、消費者の意識がすでに変わり始めていると説明した。企業側がAgentic AI(AIエージェント)を打ち出す一方、消費者も受け入れの準備を進めているとし、パーソナライズされたエージェントに関心があるとの回答は70%、エージェントを軸に複数デバイスをそろえることに関心があるとの回答は66%だったと明らかにした。
そのうえで、「業界はより強力なAIを作るだけでは不十分だ。人々が実際に信頼し、日常的に使う形でAIを届けなければならない」と強調した。
Qualcommは、関心を信頼へとつなげる要素として、「親近感」「期待」「信頼」「推奨」の4つを挙げる。これに対応するため、パートナーを4つの類型で展開している。コミュニティパートナーは製品の推奨を担い、クリエイターは新技術を消費者にわかりやすく伝える。エコシステムパートナーはSnapdragon搭載機器を開発し、ブランドパートナーはスポーツやエンターテインメント分野のスポンサーシップを通じてSnapdragonを訴求する。
マグワイアCMOは「昨年、『Your Ecosystem』という考え方を打ち出した」と説明した。機器同士がユーザーを中心に連携し、ユーザーの行動に合わせてシームレスにつながる世界観だという。この日の講演では、エコシステムパートナーとしてSamsung Electronics、Motorola、Meta、Lenovo、Rivianを紹介した。
各社は、Snapdragonを搭載したスマートウォッチ、折りたたみスマートフォン、スマートグラス、PC、電気自動車などを展開しているという。
ブランドパートナーとしては、Manchester UnitedとMercedes F1を挙げた。Qualcommによると、Snapdragonスマートフォンを使うManchester Unitedファンの89%が、自身の端末を他者に勧めると答えた。Qualcommは、クリエイター、OEM、Insiderコミュニティ、ブランドを結び付けるハブの役割を担うとしている。
◆Snapdragon Insiderは2300万人、アクセスプログラムで育成
Qualcommは、ファンコミュニティ「Snapdragon Insider」の強化にも力を入れる。現在の会員数は2300万人に達しており、マグワイアCMOは「Insiderの1人が投稿したコンテンツが、数百万件規模の参加を生んだ事例もある」と紹介した。
同社は、新規コミュニティメンバーやクリエイターに対し、Snapdragon搭載機器やイベント、各種体験への独占アクセスを提供する「Snapdragon Insider Access Program」を運営している。
マグワイアCMOは「多くの人は技術そのものではなく、その技術で何が可能になるかに共感する」と述べたうえで、「クリエイターは、イノベーションを人々が見て、理解し、共有できる形へ最初に変える存在だ」と語った。あわせて、技術製品の購入者の92%が従来型マーケティングより同僚の推奨を信頼するとの調査結果も示した。
さらに、クリエイターが制作したコンテンツは、従来型広告だけの場合に比べて購買転換率が大幅に高いと説明した。マグワイアCMOは「Agentic AIはもはや構想段階ではない」としたうえで、「デバイスがよりパーソナルになり、より深くつながり、仕事を支援する力を備えたときに何が起こるのかを、私たちは実際に体験することになる」と強調した。