ヒューマノイドロボット産業は、早ければ2〜3年、遅くとも5〜10年で「ChatGPTの瞬間」を迎える――。Unitreeのワン・シンシンCEOが20日、北京世界ロボットコンファレンスでこうした見通しを示した。
Cryptopolitanなどによると、ワン氏は、理想的な条件が整えば2〜3年、進展が鈍れば5〜10年で産業の転機が訪れると述べた。
その目安として挙げたのが、ロボットが初めての家庭や職場環境でも、音声やテキストによる指示だけで与えられた作業の約80%をこなせる水準だ。ワン氏は、この段階がヒューマノイド市場の本格拡大を促す節目になるとの認識を示した。
こうした発言は、Unitree上場後の市場の過熱感をややけん制する内容とも受け取れる。Unitreeは19日、中国A株市場に上場した初のヒューマノイドロボット企業となった。株価は公募価格比460.34%高で初日の取引を終え、杭州に本社を置く同社の時価総額は3400億元に達した。
一方でワン氏は、現行技術の限界にも言及した。特定の場所で十分に学習したロボットは、一見すると成功率100%に近い性能を示すことがあるが、対象物が変わったり周辺環境がわずかに変化したりするだけで性能が急落するという。
この発言は、ヒューマノイドの認識・判断と現実の物理環境の間に、なお大きな隔たりがあることを示している。とりわけ、現実世界で生じる小さな誤差を補正できない点を最大のボトルネックに挙げた。ロボットの意思決定や相互作用を担うAIモデルの限界も、大規模普及を阻む要因だと指摘した。ワン氏は、Unitreeについても、フィジカルAIの実環境への適用はなお十分ではないと認めた。
業界内でも、普及のタイミングを巡る見方は分かれている。ロボットスタートアップGalbotの創業者、ワン・ホー氏は、ロボット産業の「ChatGPTの瞬間」は2028年ごろに訪れると予測する。追加学習なしでも、ロボットが日常作業の70〜80%を処理できる段階をその基準として示した。
中国政府の後押しも続く。中国の産業団体の報告書によると、今年上半期の中国のヒューマノイドロボット出荷台数は4万台を超え、世界全体の97%を占めた。国務院傘下の研究センターは、フィジカルAI市場規模が2030年に4000億元、2035年には1兆元を超えると予測している。
もっとも、供給拡大だけで市場が広がるわけではないとの警戒も出ている。北京の経済企画当局はメーカーに対し、類似設計の製品を市場に過度に投入しないよう求めた。米連邦通信委員会(FCC)も先月、国家安全保障を理由に、外国製のヒューマノイドロボットと四足歩行ロボットの今後の輸入を禁止した。
ヒューマノイド市場を巡る焦点は、単なる出荷台数の競争から、未知の環境で実作業をこなせる汎用性と政策対応へ移りつつある。