米国のZ世代の一部で、スマートフォンやソーシャルメディア(SNS)と距離を置き、対面でのつながりを見直す動きが広がっている。技術そのものを拒絶するのではなく、日常に深く入り込んだデジタル環境との向き合い方を問い直す流れといえそうだ。
Business Insiderが8月20日(現地時間)に報じたところによると、ニューヨークの「Luddite Club」は2021年の発足以来、週1回の集まりを続けている。参加者はトムキンス・スクエア・パークなどに集まり、文学や日常生活、技術が暮らしに与える影響について語り合う。
活動内容は会話だけではない。散歩や宝探しを楽しむほか、iPadを地面に投げつけて壊すパフォーマンスを行うこともあるという。
共同設立者のジェイムソン・バトラー氏(Jameson Butler)は、新型コロナウイルス禍のさなか、スマホの利用を減らすため折りたたみ式携帯電話、いわゆるフリップフォンに切り替えた。当初は一時的なSNSデトックスのつもりだったが、現在19歳の同氏はいまもスマホに戻っていない。
同氏は「フリップフォンに替えてから生活の質は大きく改善した」と語り、「携帯電話を常に持っていなければならないという発想そのものを見直すようになった」と話した。
もう1人の設立者、ローガン・レーン氏(Logan Lane)も、「スマホとSNS、そして絶え間ないコミュニケーション環境が日常に入り込みすぎている」と指摘する。一方で、クラブはあらゆる技術を否定しているわけではない。
レーン氏は「私たちが反対しているのは、生活を良くしない技術だ」と説明した。会員の中には、アプリストアがなく、通話やSMS、写真、メモ程度しか使えないフリップフォンを使う人もいれば、スマホやノートPCを併用する人もいるという。
もっとも、技術と完全に切り離された生活を送るのは簡単ではない。ブルックリンで活動するフリーランスの映画制作者、ミケル・エンリゲ氏(Miquel Enrigue)は、「SNSは仕事を見つけるための、事実上唯一の安定した手段だ」とした上で、「プラットフォームを離れたくても、現実には簡単ではない」と語った。
長期会員のバレット・シェパード氏(Barrett Shepard)も、「ラッダイトの暮らしの本質はフリップフォンそのものではなく、技術をどう使うかにある」と強調した。
こうした空気は、若年層でAIへの警戒感が強まっている流れとも重なる。Gallupが4月に公表した調査によると、米国のZ世代の31%がAIに怒りを感じると回答した。1年前の22%から9ポイント上昇した。
AIを毎週利用している人の割合は51%と依然として高い一方、期待感は低下したという。
Pew Research Centerの最新調査でも、30歳未満の米国人の55%が、日常生活におけるAIの拡大について、期待よりも懸念の方が大きいと答えた。2021年の31%から大きく上昇している。
もっとも、Luddite Clubの動きをZ世代全体の「脱技術」現象とみなすのは難しい。むしろ、スマホやAIを最も日常的に使う世代の内側から、技術との適切な距離を探る動きが出ている点に意味がある。
マンハッタンの幼稚園教諭、メイラ・バーンスタイン氏(Mayla Burnstein)は、「オフラインの集まりは、画面を見て育つなかで失われがちな、相手の目を見て話すことや会話を交わすことといった基本的な関係性を取り戻す助けになる」と評価した。