画像はイメージ(画像=ChatGPT)

独自AI基盤モデルを巡る中断観測が広がる中、韓国の科学技術情報通信部が事業継続の方針を明確にした。長官と次官が相次いで継続を打ち出し、独自AI基盤モデルと「フロンティアAI」を並行して進める考えを示した。ただ、両事業の役割分担や支援の線引きはなお不透明で、議論は収束していない。

独自AI基盤モデルを巡っては、評価方式をめぐる論争に加え、新たにフロンティアAI構想が浮上したことで、事業の方向性を疑問視する声が出ていた。もともと世界最高水準を目指すとされた独自AI基盤モデルと、フロンティアAIの違いが分かりにくいとの指摘も続いている。

ペ・ギョンフン副首相兼科学技術情報通信部長官は9月30日、Facebookで「結論から言えば独自AI基盤モデルは続ける」と表明した。その上で「同時にフロンティアAIにも挑戦しなければならない」と述べ、独自AI基盤モデルの第3次評価も計画通り完了させる考えを示した。

これは、独自AI基盤モデルを打ち切り、特別目的会社(SPC)の設立などを通じてフロンティアモデル開発に軸足を移す案が検討されているとの報道が相次いだことを受けたものだ。

リュ・ジェミョン科学技術情報通信部第2次官も、事業を巡る不透明感の払拭に動いた。リュ次官は9月29日、あるメディア主催のカンファレンスで祝辞を述べた後、独自AI基盤モデルについて「急変する環境の中で、今進んでいる道が正しいのかを巡り、さまざまな意見や論争があり得る」とした上で、「より多くの専門家や産業界と意思疎通し、重要な時期を逃さないようにしたい」と語った。

同部は9月28日に公表した説明資料でも、最上位級AIモデルの開発に向けて財源を集中的に投じる必要性は認めつつ、独自AI基盤モデルの中断やSPC設立については「決まったことはない」と説明した。

議論は政界にも波及している。ハン・ドンフン無所属議員は9月30日、Facebookでこの問題に言及し、政府のAI政策を批判した。ハン議員は「環境が変わったのではない。戦略が不足していた」と主張した。

独自AI基盤モデルは、国内企業が独自開発する基盤モデルを通じて、国家のAI競争力を高めることを目的とした事業だ。グローバルAIモデルへの依存を下げ、米国・中国に対抗し得るAI競争力の確立を掲げる。イ・ジェミョン政権が国政課題として進めてきたプロジェクトでもあり、現在はLG AI研究院、SKテレコム、Upstageの3チームが次回評価に向けて準備を進めている。

開始当初の目標水準も高かった。科学技術情報通信部は、選定チームに対し、評価時点で直近6カ月以内に公開されたグローバル最新モデルの95%以上の性能達成を目指すよう求めていた。併せて、評価のたびに目標や手法を見直す「ムービングターゲット」方式も掲げ、急速に変化するAI技術環境に柔軟に対応する方針を示していた。

ただ、フロンティアAIが新たな軸として加わったことで、現場の混乱はむしろ大きくなったとの見方が出ている。業界では、独自AI基盤モデルが当初からグローバル最高水準に迫るモデル開発を掲げていた以上、フロンティアAIを別事業として立ち上げるのであれば、目標設定や政府支援の範囲をどう切り分けるのか、より具体的な説明が必要だとの声がある。

ある業界関係者は「もともと独自AI基盤モデルは世界最高性能のモデルを目指す事業ではなかったのか。フロンティアAIとどう差別化するのかが見えにくい」と話す。

別のAI業界関係者も「事業の性格が明確でなければ、企業としてどの目標に合わせてモデルを開発すべきか混乱が生じる。すでに新事業としてのフロンティアAIの準備を進めているところもあると聞く」と指摘した。

これに対し、科学技術情報通信部は両事業の役割は異なると説明している。ペ副首相はFacebookで、「フロンティアAIは韓国の技術的限界を突破するための軸であり、独自AI基盤モデルは韓国のAIを産業と社会のあらゆる場面で使われるようにするための軸だ」と述べた。

政府の説明に沿えば、独自AI基盤モデルはグローバルモデルとの単純な性能競争よりも、産業活用に重点を移す位置付けになる。一方のフロンティアAIは、大規模なコンピューティング資源と国内の研究力を集中投入し、世界最上位のモデルそのものを狙う構想といえる。

一部では、国内モデルとグローバル最上位モデルとの性能差が明確になる中で、政府が新たにフロンティアAIというカードを切ったのではないかとの分析も出ている。科学技術情報通信部はこれまで、米スタンフォード大学のAI指数などを引用し、韓国が米国、中国に次ぐAI「3強」の一角だと強調してきた。6月に発表した「国民主権政府1年 科学技術情報通信部 代表成果」でも、スタンフォード大学の指数とAAII基準に基づくAIモデル競争力3位を主要成果として掲げた。

一方、直近のAAII評価では、独自AI基盤モデル参加企業のモデルはグローバル最上位モデルとの差を示した。10月1日時点のスコアは、Upstageの「Sola Pro4」が28点、SKテレコムの「A.X-K2」が23点、LG AI研究院の「K-EXAONE 2.0」が20点。これに対し、米Anthropicの「Claude Opus 5.5」は58点、OpenAIの「GPT-6 Astra」は53点、中国Alibabaの「Qwen3.8 Max」も45点で、国内モデルを上回った。

特に、AAIIで韓国がAIモデル競争力3位と評価されたことと、国内の個別モデルが世界3位水準の性能を持つことは別問題として見る必要がある。国内AI企業が独自モデルの開発力を高め、エコシステムを形成している一方、単一モデルの最上位性能を競う局面では、米国と中国が先行しているという構図だ。

仮にフロンティアAI事業が本格化しても、課題は少なくない。フロンティアモデルの開発には、大量のGPU、データ、研究人材の投入が不可欠になる。限られた資源をフロンティアモデルに集中させれば、独自AI基盤モデルへの支援規模や支援方式が変わる可能性がある。逆に、独自AI基盤モデルとフロンティアAIの双方に大規模な資源を投じれば、事業重複を巡る論争は避けにくい。

SPC方式についても同様だ。複数企業と研究陣の力を一つに集約できる利点はあるが、参加基準、出資構造、技術の権利帰属、開発主体をどう設計するかは決まっていない。資本力とインフラを持つ大企業中心の枠組みになれば、スタートアップの参画余地が狭まるとの懸念もある。

今後、政府が示す詳細案が今回の論争を沈静化できるかが焦点となる。AI業界関係者は「独自AI基盤モデルを続けるという宣言だけでは不確実性は解消しない。二つの事業で目標と支援方式がどう異なるのか、政府が具体的な青写真を示す必要がある」と話している。

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