米国で、ドナルド・トランプ大統領一族の暗号資産事業による収入を「不適切」とみる声が6割を超えた。大統領の個人事業の利益が政策判断に影響しているとする回答も7割近くに達し、利益相反への懸念が改めて浮き彫りになった。
8月21日付のCoinPostが伝えたReutersとIpsosの調査によると、8月14~17日に米国の成人1166人を対象に実施したオンライン調査で、回答者の63%が「トランプ一族が暗号資産事業で不適切な利益を得ている」と答えた。「適切」との回答は32%だった。
政策判断への影響を巡る懸念も強い。回答者の69%は、暗号資産を含むトランプ大統領の個人事業の利益が政策判断に影響していると答えた。
政党支持別では見方の違いが鮮明だった。共和党支持層では約70%がトランプ一族の暗号資産収入を「適切」と評価した一方、無党派層と民主党支持層では否定的な見方が多数を占めた。
政策決定への影響についても温度差が出た。共和党支持層では約半数が影響を認めたのに対し、無党派層では約3分の2、民主党支持層では約90%が、大統領の個人事業が政策判断に影響していると回答した。
こうした議論の背景には、トランプ大統領が公表した資産公開報告書の内容がある。トランプ大統領は、6月末に公開された2025年の資産公開報告書で、暗号資産関連事業による収入として14億ドル超を申告した。これは同期間の総収入約22億ドルの大きな部分を占める。
内訳では、トランプ氏のミームコインがライセンス供与などにより約6億3500万ドルの収入を計上した。このトークンは就任式前に発行されたが、発行後に価格は大きく下落した。
トランプ一族が設立した暗号資産プロジェクト「World Liberty Financial(WLFI)」については、トークン販売を中心に約5億~8億ドルの収入を上げたと集計された。関連法人が販売収益の75%を受け取る仕組みとされる。
メラニア・トランプ氏のミームコイン収入は約600万ドルで、規模は相対的に小さかった。もっとも、これらはいずれも費用控除前の金額で、純利益は資産公開資料に明記されていない。集計方法の違いから、報道機関ごとに推計値に差が出ているという。
トランプ一族が実際に確保した暗号資産関連の利益規模を巡っては、別の推計もある。Reutersの集計では、主要な暗号資産事業による利益は大統領就任後に少なくとも23億ドルに達すると推定された。これは、トークン購入者が被ったとされる損失額と同水準だという。
これに対し、トランプ陣営は利益相反の疑いを否定している。トランプ大統領は復帰後、家族事業の日常的な運営には関与しておらず、自身の資産は独立した機関が管理していると主張した。ホワイトハウスも、大統領の資産運用は独立した金融機関に委ねられており、利益相反には当たらないとの立場を示している。
一方で、倫理面での批判は続いている。ジョージ・W・ブッシュ政権で倫理担当の法律顧問を務めたリチャード・ペインター氏は、現政権では事業と政治が重なり合う度合いが、過去に例を見ない規模に達しているとの見方を示した。
今回の調査は、トランプ一族の暗号資産事業を巡る問題が、単なる個人ビジネスの範囲を超え、大統領の利益相反や政策判断の独立性、暗号資産市場への信頼にまで波及していることを示した。今後も暗号資産関連事業と政策運営の結び付きが強まれば、政界での倫理論争が続く可能性がある。