暗号資産取引所OKXが、香港拠点の社員によるAnthropicの生成AI「Claude」の利用を停止した。ブロックチェーンメディアのU.Todayが20日(現地時間)に報じた。企業向けアカウントの一時停止を受け、同社は今月上旬に措置を講じ、中国本土を経由して移動する社員にも適用したという。
背景には、Anthropicの地域ポリシーがある。Anthropicはサポート対象外の地域からClaudeにアクセスすることを認めておらず、現在の提供対象地域に香港と中国本土は含まれていない。
OKXの企業向けアカウント自体はその後復旧したが、香港在勤の社員や中国本土を経由する社員に対するアクセス制限は継続している。
このため、対象社員のAI関連業務は別の大規模言語モデル(LLM)に振り替えて対応している。従来はClaudeとOpenAIのChatGPTを併用していたが、現在は代替モデルを中心に運用しているという。
今回の対応は、同社のAI活用方針との関係でも注目される。OKXはこれまで社員によるAI活用を積極的に進め、AIの習熟度を人事評価項目にも反映してきた。
また、同社は複数の主要LLM事業者に対し、月間600万〜800万ドルを支出している。日常業務へのAI活用を深める中で、特定モデルが利用できなくなった形だ。
今回の事案は、AIを巡る米中間の緊張がグローバル企業の運営に直接影響し得ることを示している。Anthropicが非対応地域からのアクセスを遮断している以上、企業側はその基準に合わせて社内ツールの利用範囲を見直さざるを得ない。
とりわけ国境をまたぐ移動が多いグローバル企業では、同じアカウントを使っていても、接続地域によって利用可否が変わる可能性がある。
同様の事例は他社でも起きている。Goldman Sachsは今年初めに似た問題に直面し、4月には香港の社員がClaudeに接続できなかった。制限は国籍を問わず適用されたとされ、当時は主にソフトウェアエンジニアが利用していたという。
一方で、中国企業では自社判断で利用を制限する動きも出ている。Alibabaは7月、社員によるClaude Codeの利用を禁止した。Anthropicのコーディング支援ツールを高リスクのソフトウェアに分類したという。
海外子会社を通じた迂回アクセスを試みる企業もあったが、足元では制限が強化され、こうした手法は使いにくくなっている。
OKXの事例は、AIツールを業務の中核に組み込む企業であっても、地域ポリシーの変更に応じて利用戦略を見直す必要があることを示している。香港と中国本土が提供対象外である限り、グローバルな暗号資産企業のAI運用にも同様の制約が及ぶ可能性が高い。