画像=ChatGPT

自動車業界で、競争軸がソフトウェア定義車両(SDV)からAI定義車両(AIDV)へ移るとの見方が強まっている。車載ソフトの機能そのものより、周辺道路やドライバー、走行状況をどこまで正確に理解し、適切に対応できるかが競争力を左右するという見立てだ。

TomTomの最高製品責任者(CPO)、レオ・セイ氏は19日(現地時間)、ITメディア「TechRadar」への寄稿で「自動車産業はAIを軸に新たな転換点を迎えている」と指摘した。これまで新車の競争力は馬力やシリンダー、トルクといった機械性能が中心だったが、足元では運転支援機能やEVの航続距離、デジタル体験、コネクテッドサービスの重要性が増していると説明した。

その土台となるのがSDVだ。中央集約型コンピューティングと常時接続機能を備えた車両では、出荷後もソフトウェア更新や新サービスの追加が可能になる。ハードウェアとソフトウェアの結び付きが緩み、車両機能を継続的に改善できるようになった。

さらにセイ氏は、その先にあるAIDVへの進化に言及した。AIDVでは、人が事前に書いたルールではなく、継続的に学習する機械学習モデルが車両の挙動や機能を左右するという。

AIの適用範囲は自動運転にとどまらない。ナビゲーションやインフォテインメント、バッテリー・エネルギー管理、空調システムなど、車両全体に広げられるとしている。

QualcommとNissanも今年、AIDVの概念に触れている。車両が周辺環境や乗員の状態を把握し、学習と適応を重ねていく方向性を、次世代技術の流れとして示した。

セイ氏が特に重視するのが、コンテキストデータの役割だ。センサーだけに依存する車両は、カメラやレーダーが捉えた現在の状況を基に判断する。一方で、高精度地図や道路情報を組み合わせれば、車線の分岐や制限速度の変更、道路規制、潜在的なリスクなど、見通し外の状況も事前に把握できるという。

これにより、急ブレーキや急な進路変更を減らし、より自然な運転支援につなげられるとしている。

AIは道路データ自体の生成にも活用できる。航空・衛星画像や車両信号、GPSの移動パターンなどを分析し、車線構造や道路標識、停止標識といった情報を自動で識別できれば、高精度な道路モデルの構築・更新コストを抑えられるとした。

セイ氏は今後、自動車メーカーのボトルネックは、より優れたAIモデルの開発そのものから、信頼性の高い最新のコンテキストデータをどれだけ大規模にモデルへ供給できるかへ移るとの見通しを示した。

AIDVはSDVを置き換えるというより、SDVの上にAIを重ねる概念に近い。自動車メーカーは共通のコンピューティング基盤やデータ基盤を活用しながら、走行性能の味付けやユーザーインターフェース、運転支援機能などで差別化を図ることになりそうだ。

自動車の競争は今後、「機能をどれだけ搭載したか」ではなく、「車両が状況をどこまで理解し、どう対応できるか」へと軸足を移していく可能性がある。

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