写真=マシュー・ミラー氏(Salesforce グローバルTableau製品管理担当副社長)

Salesforce傘下のTableauは8月、AIが利用者の問いを待たずに自律的にインサイトを提示する「エージェント型分析(Agentic Analytics)」の方向性を示した。ナレッジエンジンとディシジョンエンジンを中核に、組織固有の文脈を学習し、分析結果の提示にとどまらず業務実行まで支援する構想だ。

この方針は、Salesforce Koreaがソウル市サムソンドンのグランド・インターコンチネンタル・ソウル・パルナスで開いた年次AI・データカンファレンス「データパム・ソウル2026」で明らかにされた。基調講演に登壇したSalesforceのグローバルTableau製品管理担当副社長、マシュー・ミラー氏は、「ユーザーがデータを探しにいく時代は終わった。これからはデータがユーザーのもとにやってくる」と述べ、現在をエージェント型分析の時代と位置付けた。

ミラー氏によれば、従来の分析は、人がTableauのようなツールを直接操作してデータを読み解く形が中心だった。これに対しAIエージェントは、利用者が何を必要としているかを把握し、業務の進め方や判断の前提を学習するという。さらに、組織ごとに異なる用語や思考の枠組みにも適応できるとした。

同氏は、エージェント型分析は単なる自動化にとどまらず、AIエージェントが能動的に新たなインサイトを見つけ出す段階まで含むと説明した。その進化は大きく3つの観点で整理できるという。第1に、受動的な分析から能動的な分析への転換。第2に、単なる数値の提示にとどまる記述分析から、より高度な分析への転換。第3に、これまで高度な専門性が求められた分析を、誰もが自分の言葉で理解し活用できる形に変えることだ。

また、「データだけではインサイトは完成しない」とも強調した。適切な判断には、上司が作成した文書の文脈や、協業ツール上で交わされた会話の文脈が欠かせないという。

その具体例として同氏は、「コンバージョン率」という同じ言葉でも、マーケティング部門ではリードが顧客に転換する比率を指し、財務部門では通貨換算比率を意味する場合があると説明した。組織ごとに蓄積された文脈や知識が異なるため、エージェントもその文脈を学習する必要があるとした。

こうしたエージェント型分析を支える基盤として、ミラー氏は「ナレッジエンジン」と「ディシジョンエンジン」の2つを挙げた。両者を連携させることで、エージェントが利用者の質問を待たず、先回りしてインサイトを提示できるようになるという。

ナレッジエンジン(Knowledge Engine)は、データ接続と意味解釈を担う。対象は企業の構造化データにとどまらず、PDFやCSV、個人が管理するExcelファイルといった非構造化・半構造化データにも広がる。さらに、公的な認証を受けた標準データモデルだけでなく、暫定的に作成されたデータにも意味付けが可能だとした。

同氏は、Tableau内に蓄積された知識資産にも言及し、ナレッジエンジンがそれらの情報を基に、エージェントによる組織文脈の理解を支援すると説明した。

一方、ディシジョンエンジン(Decision Engine)は、能動的で知的なインサイト生成を担う。可視化に加え、統計モデルや機械学習、さらに実際のアクションにつなげる実行レイヤーまで含むという。

イベントでは、基調講演に続く3つのセッションで、Olive Young、LG CNS、Toss Bank、Krafton、Baropharmなど韓国主要企業によるTableau活用事例も紹介された。

Olive Youngは、セルフサービス分析(Self-Service Analytics)を基盤に現場主導のデータ活用文化を構築し、それをTableau MCPベースのAIデータエージェント(AI Data Agent)へ発展させた事例を取り上げた。検証済みデータを基にAI活用時のデータ整合性を高め、従業員がSlackなどの業務ツール上で、自然言語だけで期間別の売上比較や実績分析に必要な情報を即座に確認できるようにしたという。

LG CNSは、購買データとERP、社内外データを統合し、データに基づく意思決定を支援する分析環境を紹介した。Toss Bankは、約5700のダッシュボードと362件のプロジェクト運用を通じて蓄積した自動化の経験に加え、データリネージや権限管理体制の高度化事例を共有した。

Kraftonは、ビジネス指標と文脈を一貫して管理するうえでのデータガバナンスの重要性を訴えた。Baropharmは、Tableauベースのデータ前処理によって製薬データの分析効率を高めた事例を公開した。

会場ではこのほか、アナリストが課題定義、指標設計、結果検証、意思決定を高度化するための活用戦略も示された。Salesforceは、Tableau Agentを活用し、自然言語でデータ準備から分析、ダッシュボード構築までの一連の工程を進めるデモを披露した。

さらに、SalesforceとSlackの連携・統合に加え、Tableau MCP(Model Context Protocol)を基盤にClaude Codeなど外部のLLMやAIエージェントと接続し、分析から実行までをつなぐエージェント型分析ワークフローも紹介した。

Salesforce KoreaでTableau事業を統括するKim・Yeonggyun氏は、「AIによって誰もが素早くデータを分析し、答えを得られるようになるほど、企業競争力は単により多くのデータを持つことや、より精緻な分析を行うことだけでは生まれなくなる」と述べた。

そのうえで、「信頼できるデータと明確なビジネス文脈を基に、インサイトをどれだけ速く正確に実行へ結び付けられるかが、データ活用力の新たな基準になる」と指摘した。

さらに、「エージェント型分析の役割は、過去や現状を示す段階を超え、次の行動を提案し、業務実行まで支援する方向へ広がっている」と説明。「SalesforceとTableauは、企業データに信頼と文脈を加え、韓国企業のAI転換が実質的なビジネス成果につながるよう支援していく」と述べた。

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