写真=POSCO Future M

韓国の電池業界で、次世代技術開発の軸足がハイニッケル(NCM)からナトリウム電池と全固体電池へ移りつつある。中国勢が普及価格帯のLFPで世界シェアを広げる一方、ナトリウム電池や全固体電池の商用化も急いでいるためだ。韓国政府はこうした環境変化を踏まえ、業界と共同で「バッテリー産業技術ロードマップ」を策定し、2027年から5年間で約4000億ウォンの研究開発事業を新設する方針を示した。

産業通商資源部は22日、ソウルの大韓商工会議所で官民合同の「バッテリー産業技術ロードマップ」を公表した。2027年から5年間で約4000億ウォン規模の研究開発事業を新設する。政府は、世界の電池市場について、電気自動車市場の成長鈍化や主要国の支援策後退を背景にコスト競争が激しくなっており、自国優先のサプライチェーン再編も進んでいるとの見方を示した。

韓国勢はこれまで、エネルギー密度の高いハイニッケル系電池に注力してきた。その傾向が最も鮮明なのが蓄電システム(ESS)市場だ。ハナ証券が引用したBenchmark Mineral Intelligenceのデータによると、7月の世界ESS新規設置量に占めるLFPの比率は92.1%に達した。一方、韓国勢が主力としてきたNCMは3.7%にとどまった。

電気自動車市場でも、中国製EVの拡大により、韓国電池メーカーの取り込み余地は狭まっている。ユジン投資証券は、今年の欧州EV販売の伸び率が25〜30%に達する一方、中国製EVの輸出急増によって韓国勢は十分な恩恵を受けられていないと分析した。8月末時点の中国ブランドの欧州自動車市場シェアは11%、プラグインハイブリッド(PHEV)を含むハイブリッド車のシェアは30%を上回ると推計される。普及価格帯で中国勢と同じ土俵で競うのが難しくなるなか、韓国勢が次世代技術に活路を求めた構図だ。

ロードマップでは、ナトリウム電池、全固体電池ともに2030年の商用化を目標に掲げた。産業通商資源部は、ナトリウム電池について2030年までに220Wh/kg級を開発・商用化するとした。全固体電池は2028年までに400Wh/kg級の開発を終え、2030年の商用化を目指す。ナトリウム電池は、リチウムより低コストでサプライチェーンリスクも小さいことから、普及型EVとESS向けを想定する。全固体電池はエネルギー密度と安全性を高め、高性能EVに加え、ロボット、ドローン、都市航空交通(UAM)向けの需要を見込む。

2030年までの開発では、セルメーカーと材料メーカーが役割を分担する。ロードマップには、LG Energy Solution、Samsung SDI、SK Onの電池大手3社が、規格などの非競争領域で共同仕様を策定し、重複投資を抑える方針を盛り込んだ。材料メーカーが目標性能と価格を満たす材料を開発し、セルメーカーが実証評価を経て調達につなげる取り組みも、2027年から進める。民間では、工程革新や低価格材料の開発、輸入材料の国産化に向け、2030年までに約8兆ウォン規模の研究開発と設備投資を進める計画だ。

◆2030年まではLFPが収益を下支え ESS向け正極材の供給確保が進む

正極材メーカーは、2030年の商用化目標までの収益を、足元のLFP正極材の受注で補っている。L&Fは17日、SK Onと約1600億ウォン(約18億円)規模のLFP正極材供給契約を結んだ。供給分は、SK Onの忠清南道・瑞山工場と米ジョージア州工場のESS向けLFPセル生産ラインに用いられる。契約期間は2028年末までで、両社はその後、最長3年間の延長についても協議する。延長が実現すれば、供給関係はロードマップが掲げる商用化目標の時期を超えて続くことになる。

POSCO Future Mは、ハイニッケル正極材を生産していたラインをLFP向けに切り替えた。同社は、浦項工場のハイニッケル正極材生産ラインの一部をLFP用に転換し、年末から量産供給を始めると発表した。韓国の電池メーカーとは、2027年から2032年までの6年間に19万トン超のLFP正極材を供給することで合意している。2030年の商用化を見据える一方で、生産現場では足元の需要に対応したライン転換が進んでいる格好だ。

ロードマップがナトリウム電池の用途としてESSを挙げている以上、2030年にナトリウム電池を調達する顧客層は、現在LFPを採用している顧客と重なる可能性が高い。正極材メーカーがLFPで収益を確保しながら築いたセルメーカーとの供給関係を、材料開発とセル実証の段階を経てナトリウム電池の商用化につなげられるかが、ロードマップの成否を左右しそうだ。業界関係者は「ESS需要が増えており、LFPは当面の主力収益源だ」としたうえで、「ナトリウム電池や全固体電池への転換は、目標時点以降に価格がLFP水準を下回らなければ本格化しない」と話した。

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