Teslaの次期Roadsterの発売が長期にわたって遅れている背景に、SpaceXの冷ガス推進技術を活用したホバリング機能の開発があるとの見方が出ている。米EVメディアのElectrekが19日(米国時間)に報じた。
報道によると、Tesla元社長のジョン・マクニール氏は、次期Roadster計画について、単なる新型車開発ではなく、TeslaとSpaceXの技術的な結び付きを強めるプロジェクトになっていると語った。
マクニール氏は、Teslaが準備しているRoadsterの実演イベントで、車両の「最も極端な機能」が披露される可能性があると指摘した。その上で、実際に車体が浮上する場面まで見せるかは不明としながらも、ホバリング機能そのものは実演される可能性があると述べた。
この機能は、SpaceXが開発した冷ガス推進システムに基づくもので、内部コードネームは「A71」。推進器を下方に噴射し、車体を持ち上げる仕組みとされる。
Teslaを巡っては先週まで、今月中にも「飛行Roadster」の実演が行われるとの観測が出ていた。ただ、実演車両は無人の遠隔操作方式になる可能性が高いという。推進器の騒音が非常に大きく、周囲の人の聴力に影響を与える恐れがあるためだ。
マクニール氏は、Roadsterの役割についてもTeslaの社内事情と重ねて説明した。イーロン・マスク氏は、Teslaの自動車事業に再び活力と高揚感を取り戻す必要性を認識しているとの見方を示した。
さらにRoadsterについては、TeslaとSpaceXの将来をより緊密に結び付けようとする試みだと評価した上で、両社は市場の想定より早い時期に一体化へ向かう可能性があるとも語った。
Roadsterは2017年11月に初公開された。Teslaは当時、2020年の生産開始を約束し、予約購入者から最大5万ドルの予約金を預かった。Founders Seriesの購入者は25万ドルを全額前払いしている。
公開時に示された性能は、0-60マイル加速が1.9秒、最高速度は250マイル(約400キロ)超、1回の充電での航続距離は620マイルだった。当時の仕様にSpaceXの推進器は含まれていなかった。
その後、マスク氏が冷ガス推進器を追加する「SpaceXパッケージ」に言及し、開発方針が修正された。このパッケージにより、0-60マイル加速は約1.1秒まで短縮できると説明されていた。
ただ、Roadsterの発売は少なくとも9回延期された。実演日程も2026年4月1日から4月末へとずれ込み、その後、1〜3月期決算発表時には「1カ月以内に実施できるかもしれない」とされたものの、最終的には2026年8月へ後ろ倒しとなった。現在は、推進器の開発作業の遅れが直接要因として指摘されている。
実演計画そのものも縮小している。当初は、磁化スロープを駆け上がった後、車両が後退し、姿勢を立て直してホバリングする演出が構想されていたという。
しかし、この内容はマスク氏への報告後に一部が削除された。マスク氏はこの実演について、「実行は難しく、失敗するかもしれないが、どちらに転んでも面白いだろう」と話したと伝えられている。
今回の遅延は、Teslaを取り巻く事業環境とも重なる。Tesla株は年初来で約25%下落しており、中核の自動車事業も競争激化の中で縮小している。そうした中、Roadsterは販売拡大を担う量産モデルというより、象徴性や話題性を前面に押し出したプロジェクトとして受け止められている。
焦点は、実際の実演がどこまで実現するかにある。Teslaは2017年の発表時に約束した高性能の電動スポーツカーを、いまなお市場投入できていない。一方、足元の実演計画は、量産車としての性能訴求よりも、SpaceXの推進器を使ったホバリング演出へと軸足を移しつつある。
今後のRoadsterが実際の販売車につながるのか、それともTeslaとSpaceXの技術融合を象徴するデモにとどまるのか。そこが最大の焦点となりそうだ。