中国のヒューマノイド産業が、デモンストレーション中心の競争から、実際の産業現場への導入を見据えた商用化段階へと軸足を移している。世界出荷の大半を中国勢が占める一方で、信頼性や価格、採算性といった課題も鮮明になってきた。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが19日付で報じたところによると、北京で開幕した世界ロボット大会(World Robot Conference、WRC)では、ヒューマノイドの派手なパフォーマンスよりも、実用性と収益性が主要テーマとなった。
会場では卓球やドラム演奏を披露するヒューマノイドが来場者の注目を集めたが、業界の関心は明らかに変化している。過去2年にわたって話題を集めた「見せるためのデモ」から、実運用の現場で成果を示せるかどうかを問う局面に入ったためだ。中国電子学会のシュイ・シャオラン会長(元工業情報化部副部長)は、関連産業が「大きな分岐点」に入ったと述べた。
シュイ会長は、過去2年の中核目標は「実社会での実装を進めること」だったと説明。公共サービス、物流、製造、医療、緊急対応の分野で活用事例が出始めていると明らかにした。競争の軸が、単なる移動性能や動作性能から、実際に現場で使えるかどうかへ移りつつあることを示すものだという。
生産規模も急速に拡大している。Morgan Stanleyによれば、中国は今年上半期の世界のヒューマノイド出荷の97%を占めた。出荷台数は2024年の約1万2000台から、2026年には5万台、2030年には44万6000台へ増える見通しだ。
ただ、量産への移行は単なる生産拡大では終わらない。Morgan Stanleyは、実運用環境で移動性能だけでなく、信頼性、自律性、経済性を示せるかどうかが、競争力を左右すると指摘した。
市場の期待は大きい。今回のWRCには300社超のロボット企業が参加し、前年より36%増えた。同日には、有力企業のUnitree Roboticsが上海のSTAR Marketに上場し、株価は初日に460%急騰した。TrendForceは、同社が中国ヒューマノイドの商用化を見極めるうえで「重要なケーススタディ」になると評価している。
一方で、収益性の確保は依然として課題だ。Unitree Roboticsの今年上半期の純利益は、一過性要因を除くベースで2億4400万元となり、前年同期比19%減だった。TrendForceは、主要メーカーがコストと採算の面で一時的な困難を抱えているとみている。量産能力を確保しても、採算が伴わなければ商用化のスピードは鈍る可能性がある。
需要面でも、製品の完成度を見極める段階にある。Morgan Stanleyの調査では、2025~2027年にヒューマノイド導入の可能性があると答えた企業は62%に達した一方、既存製品に満足しているとの回答は23%にとどまった。信頼性、機能性、価格競争力が、本格導入に向けた主な障壁として挙げられた。
中国政府の支援方針も、研究開発偏重から実運用へと重心を移している。今年のイベントには中央政府傘下の国有企業49社が12分野で参加した。当局は、共同技術開発と商用配備を支援するため、「中央国有企業ロボット革新コンソーシアム」を設立する計画だ。研究室での成果よりも、現場導入を支える環境整備へ政策の比重が移っている。
対外環境は厳しさを増している。米連邦通信委員会(FCC)は先月、ヒューマノイド、四足歩行ロボット、ロボット掃除機など新規ロボット機器の輸入を禁止した。すでに承認済みのロボットは対象外とした。
こうしたなか、中国側は今回のイベントで国際協力を強調し、「グローバル・ロボット応用探索プログラム」を立ち上げた。海外のイノベーションチームに量産型ロボットを提供し、試験運用を支援する仕組みだ。
シュイ会長は、グローバル企業や研究者が部品、ソフトウェア、アルゴリズム、データ、ロボット製造、応用分野にまたがる課題を共同で解決する必要があると指摘したうえで、「開放的で協調的、相互利益につながる」産業エコシステムの構築を提案した。中国ロボット産業の次の競争は、デモ映像ではなく、現場導入、コスト構造、製品の完成度に左右される局面に入っている。