写真=Shutterstock。個別化ネオアンチゲン治療とmRNAがん治療が第3相試験で有効性を示した初の事例となった。

Modernaは19日(現地時間)、個別化mRNAベースのがん治療として初めて、第3相臨床試験で主要評価項目を達成したと発表した。これを好感し、同社株は急伸した。

対象となったのは、個別化ネオアンチゲン治療「intismeran autogene」と、Merckの免疫チェックポイント阻害薬「Keytruda」を併用する第3相試験「INTerpath-001」だ。

試験では、手術で腫瘍を切除したステージ2B〜4の黒色腫患者を対象に評価を実施した。Modernaによると、無再発生存期間と遠隔転移のない生存期間の2つの主要評価項目を達成した。

今回の結果は、個別化ネオアンチゲン治療が第3相試験で有効性を示した初の事例であり、mRNAベースのがん治療としても第3相で初めて成果を示したことになる。

併用療法は、標準治療であるKeytruda単独療法を主要2項目で上回った。術後の再発抑制を目的とする補助療法の領域で、個別化ネオアンチゲン治療が既存の大型免疫抗がん薬に対し臨床的に有意な改善を示したのは初めてだとしている。

intismeran autogeneは、患者ごとに治療内容を設計するのが特徴だ。画一的な薬剤を投与するのではなく、患者の腫瘍で見つかった変異を解析し、それぞれに合わせたmRNAを設計する。

このmRNAは、免疫系が認識できる特定のタンパク質断片を体内で作るよう促し、それを手がかりに免疫系ががん細胞を攻撃する仕組みだ。さらにKeytrudaを併用することで、がん細胞が免疫細胞の攻撃を逃れる際に働く「免疫のブレーキ」を外し、術後に残存している可能性のあるがん細胞の排除を後押しする狙いがある。

市場の反応は大きかった。Moderna株は前日比177%高の174.38ドルで取引を終え、Keytrudaを販売するMerck株も上昇した。

株価急騰の背景には、Moderna株の高い空売り比率もあるとみられている。新型コロナウイルスワクチン後は、業績や成長性への懸念から空売りが積み上がっており、流通株式に対する空売り比率は13.5%に達していた。

株価上昇に伴い、空売り筋の含み損は約48億ドルまで拡大した。損失回避のために借りた株を買い戻す動きが強まれば、ショートスクイーズが発生し、株価上昇に一段と拍車がかかる可能性がある。ORTEX共同創業者のピーター・ヒラーバーグ氏は、空売り株1株当たりの損失がほぼ100ドル規模に膨らんだとし、こうした圧力がショートスクイーズを誘発し得るとの見方を示した。

もっとも、今回の結果が直ちに商用化を意味するわけではない。ModernaとMerckは今後、全生存期間を含む未公表の副次評価項目について追跡を続ける方針だ。

今後の焦点は、今回の結果が術後黒色腫の補助療法における標準治療を変えるかどうかにある。同時に、個別化mRNA技術が黒色腫以外のがん種にも広がるかが問われる。

新型コロナワクチンでmRNA技術の可能性を示したModernaが、個別化がん治療で新たな市場を切り開けるかにも注目が集まる。今回の第3相試験の成果が今後の後続試験や適応拡大でも再現されれば、mRNAの活用領域は感染症ワクチンからがん治療へと本格的に広がる可能性がある。

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