米国ではデジタル資産市場構造法案「クラリティ法」の審議停滞が続く一方、韓国では改正特定金融取引情報法が8月20日に施行された。米国の制度整備の遅れと韓国の参入規制強化が重なる中、暗号資産市場では資金の流れと先行きへの見方が交錯している。
クラリティ法を巡っては、年内成立への期待が大きく後退した。2月19日時点で82%とみられていた成立確率は、8月15日には約19%まで低下。Galaxy Digitalはこれを10%へ引き下げた。
Galaxy Digitalのリサーチ統括、アレックス・ソン氏は、上院が復帰直後に手続き開始の採決に入らなければ、審議に使える時間はさらに限られると指摘した。実際、上院が確保できる審議期間は2〜3週間にとどまるとの見方が出ている。
こうした中、ホワイトハウスは8月19日、トランプ大統領に加え、マイケル・セリグCFTC委員長、ポール・アトキンスSEC委員長が、Coinbase、Ripple、Chainlink、Kraken、Gemini、Andreessen Horowitz、ニューヨーク証券取引所、Nasdaqの経営陣らと会合を開いた。法案審議が進まない中でも、政権・規制当局と業界の対話は続いている形だ。
一方、Bitcoin Magazineのアナリスト、イザヤ・オースティン氏は、上院修正案が原案256ページを全面的に書き換える内容となった結果、ビットコインを「商品」として位置付ける中核条項と、米連邦準備制度理事会(FRB)による小売り向けCBDC発行の禁止条項が削除されたと指摘した。その上で、法案の性格が実質的に「アルトコイン救済法案」に近づいたとの見方を示した。
また、米商業銀行の総資産がビットコイン時価総額全体の約20倍に達する一方で、CFTCの人員はこの1年で21%減少したとされる。法案成立後の執行体制に疑問が残るとの指摘もある。
相場面では、ビットコインは今週を通じて6万3000ドル前後で推移した。2028年春に予定される第5回半減期まで残り659日となり、ブロック報酬は3.125BTCから1.5625BTCへ減る見通しだ。
もっとも、週足ベースの相対力指数(RSI)は39.64まで低下し、テクニカル面では弱気シグナルも点灯している。中東情勢への警戒感が再び強まったこともあり、相場には緩やかな下押し圧力がかかった。
ビットコインの先行きを巡っては、強気派と弱気派の見方が一段と鮮明になっている。Bloomberg Intelligenceのシニア・コモディティ・ストラテジスト、マイク・マクグローン氏は、ETFへの資金流入の鈍化や米株に対する相対パフォーマンスの低下を理由に、1万ドルまで下落する可能性があると警告した。
10xリサーチのマルクス・ティレン氏は、ビットコインが100万ドルに到達するには今後4年間で約15兆ドル(約2250兆円)の追加資本が必要になるとして、「数学的に不可能だ」と述べた。
これに対し、ストラテジのマイケル・セイラー会長は、総供給量が2100万枚に固定されたビットコインを「デジタルな経済エネルギー」と位置付け、最適な価値保存手段だとの見解を改めて示した。Swan Bitcoinのコリ・クリップステンCEOは、10月ごろに5万3000〜5万7000ドルで底打ちした後、2028年の半減期前に13万ドルまで回復し得ると見通している。
今回の調整を次の上昇サイクルに向けた底入れとみるか、それとも構造的な弱気相場の始まりとみるかで、市場の評価は大きく分かれている。
XRPは今週、主要銘柄の中で最も弱い値動きとなった。8月16日には0.9992ドルまで下落し、2024年11月以来初めて心理的節目の1ドルを割り込んだ。2025年7月に付けた過去最高値3.65ドルからは72.6%安の水準にある。
著名チャーティストのピーター・ブラント氏は、「いったい誰がXRPを気にするのか。仮に受け取っても、すぐにビットコインへ替える」と述べ、強い懐疑論を示した。Altcoin Dailyのアーロン・アーノルド氏も、Rippleは楽観的でもXRPそのものには2017年以降目立った成果がないとして、企業成長とトークン価値が分離している構造的な問題を指摘した。
その一方で、底打ち観測も根強い。アリ・マルティネズ氏は、月足チャートに現れたトム・デマークの買いシグナルを根拠に、短期目標として1.06ドルを提示した。アナリストのチャートナードは、過去の大幅上昇局面の前にみられた70〜90%の調整との類似性を挙げ、最大11ドルまで反発する可能性に言及した。
実際、XRP現物ETFには4〜7月に累計約15億ドル(約2250億円)が純流入した。Binanceへのクジラウォレットによる入金も価格下落とは無関係に増加が続いており、短期の価格軟調と長期の資金フローが食い違う状態が続いている。
イーサリアムを巡っても、市場参加者の見方は割れている。2024年のXRP上昇率700%を的中させたトレーダーのドンアルト氏は、イーサリアムを1900ドル台で買い始めたと明らかにした。2000〜2200ドルをレジスタンス、1700〜1800ドルを買い増しゾーンに設定したという。
同氏は非公式のマクロ目標として1万ドルを掲げる一方、実際の利益確定目標は3000ドルに置き、想定リターンは約57%と、より保守的な戦略を示した。
価格見通しとは別に、イーサリアムのエコシステム内部では財政構造を巡る議論も浮上している。Grayscaleのリサーチ責任者ジャック・パンドルス氏は、イーサリアムを「税収ではなくETH発行を財源とする小国家のような存在」に例えた。バリデーターが年間約70万ETHの報酬を受け取る一方で、コア開発者への現金報酬が不足している点を問題視している。
韓国市場では、8月20日に施行された改正特定金融取引情報法が最大の注目材料となっている。大株主の適格性審査の対象は、代表者や役員に加え、最大株主、議決権10%超を保有する主要株主、さらに最大株主の特別関係者まで広がる。審査根拠となる法令には、独占規制および公正取引に関する法律や租税犯罪処罰法などが新たに加わった。
ガバナンス変更時の届け出も、従来の事後申告(変更後14日以内)から事前申告(変更30日前)へ改められた。マネーロンダリング対策に関わる人員要件や電算設備の要件も強化される。
一方で、「違反の程度が軽微な場合は欠格事由から除外する」との例外規定も盛り込まれた。これにより、Naver FinancialがDunamuの完全子会社化を進める動きには追い風になり得るとの見方も出ている。
同時期に公表された韓国主要交換業者の上期業績は総じて低調だった。Dunamuの営業収益は4081億ウォン(約449億円)で前年同期比49.1%減、営業利益は79.7%減の1115億ウォン(約123億円)だった。
Bithumbも売上高が48.7%減の1688億ウォン(約186億円)、営業利益は83.4%減の149億ウォン(約16億円)となった。当期純損益は1087億ウォン(約120億円)の赤字に転落した。取引代金の減少に加え、グローバル流動性の縮小や、国内外投資家の資金がAI・半導体関連株へ向かったことが響いたとみられる。
その一方で、銀行、カード会社、フィンテック各社は、規制の最終確定を待たずにウォン建てステーブルコインの実証実験を加速させている。上期に12件だった関連MOUとPoCは、下期に入って44日間でさらに7件増えた。
具体例としては、CoupangとWoori Bankによるリアルタイム決済のPoC、BC CardによるUSDCを使った外国人決済のPoC、Hyundai CardとHyundai Motorによる米国・メキシコ間の法人向けUSDT送金PoCなどがある。事業化を見据えた動きは着実に広がっている。