写真=SK telecom本社

SK telecomは、政府の「独自AI基盤モデル」プロジェクトの第2段階評価を通過した。産業分野での活用可能性や国内AIエコシステムへの波及効果も評価対象となり、同社は実用面での競争力を示した。今後は次段階に向け、兆パラメータ級モデルやマルチモーダル、AIエージェント領域へと開発範囲を広げる方針だ。

同社の開発チームは、Upstage、LG AI Researchの各チームとともに第2段階評価を通過した。評価は、ベンチマーク40点、専門家評価35点、ユーザー評価25点の合算で実施された。

専門家委員会は、SK telecomについて、数理推論と韓国語分野で比較対象モデルの中でも最上位クラスの性能を確保したと評価した。加えて、大規模な商用サービスへの実装実績を通じて、運用性と実用性を示した点も高く評価された。国防分野へのA.X K1提供、製造業向けAIエージェントの実証、法務・税務分野のデモンストレーションなど、産業応用の事例も評価に反映された。

【A.X K1からK2へ、超大規模モデル開発を推進】

SK telecomの独自基盤モデル開発は、A.X K1で本格化した。A.X K1は、既存の他社モデルをベースに追加学習したものではなく、モデル構造の設計からデータを用いた事前学習までを自社で手掛けたフルスクラッチのモデルだ。

総パラメータ数は5190億。実際のトークン処理時に使用するのは330億パラメータに絞るMoE(Mixture of Experts)構造を採用した。モデル全体の規模を広げつつ、毎回すべてのパラメータを計算しないことで、推論効率を確保する狙いがある。

超大規模モデル学習に必要なインフラ運用の知見も蓄積してきた。SK telecomはNVIDIAと、2021年にA100 GPUベースのスーパーコンピュータ「Titan」を構築した段階から、データ、インフラ、学習環境で協力してきた。A.X K1の学習では、NVIDIA Nemotronデータセットに加え、大規模分散学習フレームワーク「Megatron-LM」、データ準備・精製ツール「NeMo Curator」も活用した。

第2段階評価に投入したA.X K2は、K1に続いて総パラメータ数を5190億から6880億へ拡大した。独自開発の「Sparse Gate Attention(SGA)」も採用した。長文コンテキスト処理では、全情報を一律に計算するのではなく、関連性の高い情報を選別して参照する仕組みで、同社は産業現場で求められる精度と運用効率の向上につながるとしている。

性能面でもK1から改善した。SK telecomによると、A.X K2は国内外14件のベンチマークにおける平均性能がK1比で32.2ポイント向上した。長文理解とエージェント関連評価では約83.9ポイント改善したという。

科学技術情報通信部が公表した第2段階評価結果では、A.X K2の高い数理推論性能が目立った。国際数学オリンピックの2026年問題を用いた評価では、金メダル基準に相当するスコアを記録した。米国高校数学コンテストAIMEの問題を基にした「Math Arena AIME 2026」リーダーボードでも、正確度97.1%で共同首位となった。

開発領域は、テキスト中心のLLMからマルチモーダル対応へも広がっている。SK telecomはK2を軸に、画像とテキストを同時に処理する「A.X K2 VL Light-Preview」と、音声モデル「A.X K2 ALM」などの派生モデルを開発した。ビジョンモデルは産業用図面や工程マニュアルの分析、音声モデルはコールセンター、会議、現場音声の分析などでの活用を想定している。

【モデル開発にとどまらず、産業導入を拡大】

SK telecomが同プロジェクトでもう一つ重視するのが、産業現場への導入拡大だ。鉄鋼メーカーのKG Steel、自動車部品メーカーのKONEXによる製造業向けAIエージェントにA.X K2を適用する。国防分野では国防部と協業し、A.X K1ベースの量子化モデル3種も開発した。これらのモデルは、陸海空軍および海兵隊の傘下部隊で活用される予定だという。

同社の開発チームは、モデル・インフラ、先行研究、データ、サービス拡散の4トラックを軸にコンソーシアムを運営している。モデル開発、データ構築、国産AI半導体の活用、サービス実証、産業応用を一体で進める構えだ。

今後は、A.X K2の後継となる仮称「K3」を兆パラメータ級へ拡張する計画だ。第1段階で5190億、第2段階で6880億まで拡大してきた流れを踏まえ、グローバル先行モデルとの性能競争に向けて、さらなるスケールアップに踏み切る。政府も次段階に進む開発チームへのGPU支援を強化する。科学技術情報通信部は、NVIDIA B200 GPUの支援規模を今年上半期の768枚から、下半期には1000枚規模へ拡大する計画としている。

SK telecomは今後、A.、A. Biz、T Mapなどの既存サービスの接点に加え、製造、国防、バイオといった産業現場でも独自モデルの適用範囲を広げる考えだ。モデル規模の拡大と並行して、ビジョン、音声、エージェント技術を組み合わせ、独自モデルを実サービスと産業現場に定着させる方針だ。

SK telecom関係者は「体感性能とエージェント遂行能力の強化に注力する」としたうえで、「日常利用と産業現場のユーザビリティを継続的に高度化していく」と述べた。

キーワード

#SK telecom #AI #基盤モデル #A.X K1 #A.X K2 #マルチモーダル #AIエージェント #NVIDIA #MoE #LLM
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.