米証券取引委員会(SEC)は19日、暗号資産関連の資金調達に適用する新たな規則案「Regulation Cryptoasset」を提案した。一定の要件を満たす投資契約について1933年証券法上の登録義務を免除する2つの例外規定を新設するほか、条件を満たした暗号資産を「投資契約」から外すセーフハーバーも盛り込んだ。
規則案の柱は、2つの資金調達例外だ。1つ目は「スタートアップ例外」で、4年間で1回に限り最大500万ドル(約7億5000万円)の調達を認める。2つ目は「資金調達例外」で、12カ月ごとに最大7500万ドル(約112億5000万円)までの調達を可能にする。
いずれも暗号資産関連の投資契約が対象で、発行体には投資家に対し、事業や資産に関する情報を原則ベースで開示する義務を課す。とりわけ7500万ドル枠を利用する発行体には、財務諸表の提出や継続開示など、追加的な義務を求める。資金調達のハードルを下げる一方で、一定規模以上の案件には継続的な情報開示を組み合わせる設計といえる。
今回の提案は、SECが3月に示した暗号資産の連邦証券法上の位置付けに関する解釈を踏まえたものだ。当時、SECと米商品先物取引委員会(CFTC)は、大半の暗号資産は証券に当たらないとの見解を示していた。新規則案は、こうした解釈を実際の資金調達手続きに落とし込む内容となっている。
セーフハーバー条項も設ける。発行体が投資契約上で約束した経営面の措置をすべて完了した、または恒久的に中断した場合、当該暗号資産を証券法上の「投資契約」の定義から除外できるようにする。
ポール・アトキンスSEC委員長は、この規則案について、暗号資産分野の起業家や市場参加者に対し、連邦証券法の下で資金を調達するための明確な道筋を示すものだと説明した。
また、州法より連邦法を優先適用する仕組みも盛り込んだ。この例外規定に基づく発行と一部の二次流通取引については、州証券法上の登録・認可要件に優先して連邦法を適用する。発行体にとっては、連邦レベルの単一ルールに沿って資金調達や流通を進めやすくなる。
背景には、議会で包括的な暗号資産規制法制の整備が遅れていることがある。米議会では「クラリティ法」の審議が進む一方、ステーブルコインの報酬を巡る暗号資産業界と銀行業界の対立や、ドナルド・トランプ米大統領の利益相反問題への対応も重なり、法案審議は難航している。こうした状況を踏まえ、SECは立法を待たず、既存権限の範囲でルール整備に踏み切った格好だ。
今後の手続きも残る。SECは当初、先週金曜日に関連委員会を開いて採決する予定だったが、直前のスケジュール調整を理由に中止した。手続き上の採決は9月中旬を予定している。
もっとも、11月の中間選挙を控え、議会の関心は選挙対応へと移りつつある。包括立法を巡る議論に残された時間は限られている。
SEC内部でも、今回の提案を最終形と位置付けているわけではない。ヘスター・ピアースSEC委員は、今回の規則案について、暗号資産に対する「明確で実効性のある規制枠組み」に向けた第一歩にすぎないと述べた。
今後の焦点は、資金調達例外の適用範囲、セーフハーバーの要件、継続開示の水準を巡る議論となる見通しだ。意見募集期間は、官報掲載後60日間としている。